ワインテイスティング 初心者のための上達のコツ・おすすめ練習方法

ワインの勉強を始めると、誰しもが体験すると言っても過言ではない壁は『ワインティスティング』ではないでしょうか。

ワインテイスティングは、JSA(一般社団法人日本ソムリエ協会)が行うソムリエ・ワインエキスパート試験やWSET(Wine & Spirit Education Trust:ワインとスピリッツの教育企業合同)でも重要視されているワインの資格試験を受けたいと思っている方にとっては逃げて通ることのできないハードルです。

今回はこれからワインティスティングを始める方向けに、できるだけ時間をかけず、且つ、応用が効くテイスティング力の上達方法とその練習方法について説明したいと思います。

また、これからお話する内容は、全くのワイン初心者だった私がワインエキスパート、WSET Level3を1発合格した経験に基づいて解説しています。そのため、自論的な点があることをご了承の上、お読みいただけましたら幸いです。

ワインティスティング力を上達させるための3つのコツ

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

不思議なことに、ワイン飲用歴も長くあらゆる有名なワインや高級ワインを嗜んできた『ワイン通』の紳士淑女の方々がワインのテイスティングに苦戦するという現実は実際によくあることです(もちろん、テイスティングにとても長けたワイン通の方も多くいらっしゃいます)。

いろんなワインを長年飲み比べ、舌も肥えていて、感覚も磨かれているワイン通の方がテイスティングに苦戦するのは何故でしょう。

私の体験から感じ取ったその理由は、テイスティングは感覚を鍛えるより先に知識の上に成り立つものということです。

つまり、ティスティング力を上達させるためには、ステップを踏みながら頭に入れた知識と感覚を結びつけていく練習を繰り返すことがとても重要です。
それは初心者がティスティング力を上達させていくために大切なコツでもあります。

  1. 先ずは知識の引き出し作り
  2. 大切なのは体育会系要素でなく文化系要素
  3. 頭の中の引き出しから五感を導き出す

この3つのコツを理解しこなしていくことで、あなたのティスティング力は今よりスピードアップして上達していくことと思います。

それでは次に具体的な行動レベルにまで落とし込んで練習方法を解説していきますね。

1.先ずは知識の引き出し作り

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

ワイン初心者の方であれば、先ず第一に取りかかるべきは自分の頭の中に『知識の引き出し』を優先順位を付けてつくることです。

『引き出し』というのは、ブドウ品種の特徴、生産地の特徴、ヴィンテージの特徴などを入れる知識の引き出しです。

何から覚えていけば良いか分からない方は、ワインの個性に影響する順に付けて取りかかってはいかがでしょう。

私であれば、

  • step1.ブドウ品種の特徴
  • step2.生産地の特徴
  • step3.ヴィンテージの特徴

の順に知識の引き出しをつくっていきます。

そして、ブドウ品種の中でも優先順位を付けて引き出しをつくる、生産地の中でも優先順位を付けて引き出しをつくることをおすすめします。

なぜなら、世界中には数多くのブドウ品種や産地が存在するため、闇雲に取り掛かると気の遠くなる作業になる割に成果が得にくいからです。

step1.ブドウ品種の特徴の引き出し作り

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

ブドウ品種の特徴を抑える優先順位は、資格試験対策など目的により多少異なってくるかもしれません。しかし、外すことのできない有名どころの国際品種は最優先にしましょう。

例えば、黒ブドウであればピノ・ノワール・カベルネ・ソーヴィニヨン・シラー(シラーとシラーズの違いもとても重要です)、白ぶどうであればシャルドネ・ソーヴィニヨン・ブラン・リースリングあたりでしょうか。

そこがある程度おさえられたら、次に先程の品種との違いも意識しながら、ワインショップやレストラン等でよく見かけるブドウ品種の引き出しを作ります。

例えば、黒ブドウのガメイ・カベルネ・フラン・ジンファンデル・マルベック・グルナッシュ・マスカット・ベリーA、白ぶどうのピノ・グリ・ヴィオニエ・ゲヴェルツトラミネール・甲州あたりでしょうか。

その時に、同じようなボディー感やアロマを持つ品種同士の特徴の比較もしておきましょう。

例えば、フルボディ系のブドウ品種でカベルネ・ソーヴィニヨンとジンファンデルの違い、第一アロマ品種であるソーヴィニヨン・ブランとリースリングの違いなどです。

また、試験対策などが目的で余力があれば、過去の試験にでた品種や最近の話題に上がっているような品種なども抑えておければベストですね。

step2.生産地の特徴の引き出し作り

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

品種の特徴の引き出しがある程度できたら、次は生産地の特徴の引き出し作りに取り掛かりましょう。そして、生産地の特徴とその特徴がブドウに与える影響を紐付けて抑えることが大切です。

ワインテイスティングを難しくさせる理由の一つは、同じ品種でも産地が違えば特徴も変わってくることが挙げられます。

例えば、同じシャルドネ品種でもシャブリ地区でつくられるシャルドネとカリフォルニアのシャルドネでは同じ品種とは思えないくらいの違いがあります(もちろん、製造方法の違いなども影響しています)。

同じ品種でも何故違いが出てくるのかというと、産地により温度・日照時間・降水量などの気候の違いや、土壌、海風や山風の影響、斜面or平地の違いなどがあるため、ブドウに与える影響が様々だからです。

カリフォルニアのナパ・ヴァレーのピノ・ノワールを例として考えてみましょう。

ナパ・ヴァレーは『海風の影響で気温は冷涼、日中と夜間の気温の日較差が大きい』というように産地の特徴の引き出しを作っておきます。

そして、その特徴がブドウに与える影響を考え、『ブドウはゆっくり熟成し濃縮感がより出てくるから、果実味豊かなピノ・ノワールに仕上がる』といった感じです。

『カリフォルニアのナパ・ヴァレーのピノ・ノワールは果実味豊か』を暗記するもの一つですが、今後多くの産地や品種のテイスティングを行っていく予定であれば、応用を利かせていくためにも根拠を理解する練習をしていくことがおすすめです。

step3.ヴィンテージの特徴の引き出し作り

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

最終ステップはヴィンテージの特徴です。ただし、今回はワイン初心者で始めてテイスティングを勉強していきたいという方向けなので、ここまでは求めなくて良いかなというのが私の正直な気持ちです。

余力があって、例えばブルゴーニュワインのヴィンテージ違いを飲み比べられるようになりたいなどの希望がある方であれば、チャレンジしてみて下さい。

考え方は生産地の特徴と同じです。

まず地域ごとに、〇〇年は収穫前に雨の多い年だった、気温が冷涼な年だったなどのそのヴィンテージの特徴の引き出しを作ります。そして、だから例年より骨格が丸くライトな感じに仕上がっている、酸が際立ちエレガントなワインになっているなどの特徴を導き出します。

ビンテージの特徴の引き出し作りは、初心者向けというより少し難易度が上がるのですが、残念ながらJSAが行うソムリエ・ワインエキスパート試験では出題されるという現実があります。しかし、そこの点数を取っていこうとするよりは、他のポイントを確実に取っていく方が得策であることはお忘れないようにしてくださいね。

2.大切なのは体育会系要素でなく文化系要素

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

「よし!今日から毎日5種類のワインを飲み比べるぞ!」とテイスティング力を上達させるために実際のティスティング練習から入ることはあまりおすすめできません。

確かに、毎日飲み比べているうちに味覚や嗅覚が鍛えられて来るかも知れませんがそれはワイン初心者にとっては遠回りの方法です。

もし、あなたがソムリエ試験対策のためにできるだけ早くテイスティング力をアップしたいと思っているのであれば、なおさら最適な方法ではないでしょう。

かという私もワインを勉強し始めの頃は、テイスティングとは『目の前のワインと素で向き合う』ことで上達していくと考え、様々なワインのブラインドティスティングを繰り返しました。

そして気づいたことは『当たるときもあれば当たらないときもある』という現実と、上達の実感がわかない不明確さからくる不安でした。

体育会系と文科系のイメージで例えるのが正しいかは分かりませんが、伝えたいことは、感覚を鍛えるために体で覚える練習から入るのではなく、自分の作った引き出しの組み合わせパターンをロジカルに繋げあわせていく練習をするということです。

テイスティングでは主に視覚、嗅覚、味覚を使います。実際の練習のステップは次のようになります。

step1.視覚

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

先ずは見た目がどうか。淡いルビー色?オレンジがかった褐色?濃いガーネット色?…などなど、目の前のワインの外観と自分の引き出しを照らし合わせて候補を出しておきます。

step2.嗅覚

シニアソムリエ直伝!ワインスクール通い前に知っておきたいワイン勉強法|#1勉強のはじめ方

どんな香りを放っているのか。明らかに香ってくる?よくよく嗅がないと分からない?何色の果実を感じる?3つのアロマを全部感じる?…などなど、嗅覚からの情報はとても多いです。

step1.で得た情報を参考にしながら、自分が感じ取れた香りと引き出しの情報を元に先ずはたくさん書きましょう。自由に書き出せる方はそれで良いですし、最初は上手く表現できないようであれば、ソムリエ試験で使われるコメントの選択肢から選ぶのもおすすめです。

また、香りをとる上での注意ポイントですが、いきなりスワリングをするのはNGです。何故なら、スワリングをすることで第一アロマが飛び、ブドウ品種の特徴を分かりづらくさせてしまうからです。

もし、どうしても香りが分からないときは、香り以外の情報から品種や産地を予想して出てくるであろう香りを目の前のワインから探し出すという裏技もあります。

これは、予想していた品種や産地が違ったときには痛い目をみるリスクもあり、積極的にはおすすめできない方法のため、最後の手段として考えてくださいね。

step3.味覚

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

どんな味がするのか。酸が際立っている?余韻は長い?骨格は?歯の裏がザラザラするような感じが残る?…などなど実際に口に含んだときの情報を様々な角度から感じましょう。

そして、step1.step2.からの情報と照らし合わせます。予想していた味であれば万々歳です。

これだ!と思う品種や産地の引き出しを参考にして、自分の味覚がその情報を探りとれるかを確認していきます。

もしも、あれっ予想と違う… となった場合は潔くstep2.或いはstep1.まで戻りましょう。口に含むことで鼻からだけでは嗅ぎ取れなかった香りを感じることはよくあることです。

そして、感じ取った全ての情報と頭の中の引き出しを照らし合わせて最終ジャッジを導き出します。

このようにテイスティングは『目の前のワインの謎を自分の引き出しで解き明かす作業』と思うとクイズ感覚で楽しみながら、テイスティング力も上達させることができるので一石二鳥ですよね。

3.頭の中の引き出しから五感を導き出す

【ワイン初心者向け】テイスティング上達のコツと練習方法

頭の中に引き出しをつくった上でテイスティングの練習を繰り返していくと、良い点が2点あります。

一つ目は、これまで感じ取れなかった香りや味を感じ取れるようになってくるという点です。それは、真っ新な状態から答えを導き出すことはできなくても、ある程度のヒントが与えられれば答えを見つけることができるというのと似ています。

また、無意識に自分の予想している香りを探り出すようになるので、自分が見つけたい香りに気付きやすくなることと同時に予想外の香りにも気付きやすくなりテイスティング力の上達に繋がります。

もう一つの良い点は、再現性が身に付くという点です。頭の中の引き出しから五感を導き出すテイスティングの練習は、頭で考え根拠をもって引き出しを繋げ合わせて答えを出す作業の繰り返しです。

いろんな組み合わせを経験していく中で、繋がりやすい組み合わせや間違えやすい組み合わせが分かってくるので、ある程度の道筋と注意ポイントが見えてきます。

鬱蒼とした山道に自分が通った痕跡を付けていき次に通るときに迷わないようにする、みたいな感じです。

もちろん100%再現できればそれに越したことはないのですが、残念ながらそれは不可能です。しかし、周りの環境や心理的要因・体調など、様々な要因で大きく左右されがちなテイスティングの不確実さを、ある程度低くしていくことができるとは言えるでしょう。

おわりに

今回は、これからテイスティングを勉強していきたい方向けにワインテイスティングの上達のコツと方法をお伝えしました。これは、今後更にレベルアップしていきたいときにも基本となる考え方です。

ワインテイスティングは一長一短で上達しないところや、これで完璧!がない点が難しくもあり楽しくもありますよね。

もしよければ参考にしていただき、目の前のワインの謎を解く感覚で、楽しみながらテイスティング力を上達させていただけると幸いです。