こんにちは!
ワインパーティブログ編集スタッフです。
「ワイン初心者に、もっとワインを好きになってもらおう!」
という事で、ワイン関係者の方へのインタビュー記事企画を立てました。
今回はThe Winery Tokyoやエノテカ(ENOTECA)などで15年以上ワインショップ店長として経験をお持ちである、合同会社ヴァインフラ代表 秋元賢介さんにインタビューさせて頂きました。
秋元さんは「いかに専門用語を使わずにワインの美味しさを伝えるか」ということに注力したソムリエさんで『個性派ワインショップ繁盛の秘訣』という書籍も出されています。
ものすごく穏やかな方なのですが、一度ワインについて話すと次々と話題が出てきて、一日中話していてもワインネタが尽きることがないのではないかと思いました。笑
秋元さんがどのようなきっかけでワインに詳しくなったのか、どのように勉強をしたのかなど、色々なお話を聴いてみましたので、ワインについて学びたい方は参考にしてみてください!
ワインに関わるようになったきっかけは?
大学を卒業して大手スーパーマーケットに就職したのですが、入社2年目の終わり頃にたまたま酒部門に配属になりました。
ちょうど赤ワインのポリフェノール効果が健康に良いということからブームになっていた時期で、
ワインのことなど全く分からないけれど「ワインを知らなくては商売にならない!」と実感し、そこで初めてワインの勉強を始めました。
そのころ知っていたワインの名前はといえば、ボジョレー・ヌーヴォーとロマネ・コンティだけ。
シャンパンのドンペリもワインの一つであるということはこの当時初めて知りました(笑)
ワインの勉強はどのように?
ワインを飲んでは本を読み、本を読んではワインを飲むという行動を毎日繰り返していました。
私が20代でワインの勉強をし始めたころ、周囲にはワインを飲むような友人は皆無で、自室に中途半端に空いたワインボトルが散乱しているというアル中のような状態でした(笑)
その結果、ワインの味わいだけでなく、文化的背景、歴史的背景、地理的条件など、1本のボトルの中にも様々な側面があることを知り、その面白さに魅了されていきました。
※後にワイナリーへの見学や生産者さんと直接話すことで理解を深めました
そして、本格的にワインを仕事として扱っていこうという想いにあふれ、日本最大級のワイン専門商社「エノテカ株式会社」の門をたたきました。
エノテカではどのような事をしましたか?
スーパーマーケットで取り扱うワインは日常的に楽しめるものが中心だったのですが、エノテカさんでは自分がそれまで到底口にしたことのなかったワインを取り扱う機会が非常に多かったです。
当時ワインアドバイザー資格(現在ではソムリエに統合)取得のためにワインスクールにも通い、字面での知識こそは持っていました。
しかし、入社初日からボルドー5代シャトーの一つである「オー・ブリオン」が入荷されたのを目の当たりにしたときは衝撃的でした。
それを棚へ1本ずつ格納した際には「いきなりこんなに凄いワインに触れられるのか!」と、とにかく落とさないようにと震える手を抑えながら棚へ格納したことをよく覚えています。笑
フランスやイタリアなどから生産者の来日が多数あったので、お客様向けイベントの準備中にワインのテイスティングをさせてもらったり、生産者の話を直に聞くことで多くのことを学びました。
フランスなどに赴き、畑を回り、ワイナリーにて醸造の現場を見て、作り手さんとともに食事をするという非常に貴重な経験もさせてもらいました。
この経験により、ワインは単なる製品ではなく、人の想いが詰まった飲み物であるのだということを実感しました。
なぜエノテカを辞めたのですか?
エノテカさんでは名だたる有名生産者について沢山学ばせていただきましたが、大手の生産者さんが中心でした。
ワインのことを学ぶにつれて分かってきたことは、有名無名に関わらず、世界中に素晴らしいワインを作っている生産者さんが数多存在するということ。
そういった「メインストリームではないワインの世界について知見を広げたい」という想いから、別店舗でのワイン販売事業を開始しました。
有名ではない生産者のワインを「ワインの魅力だけでお客様を魅了する」というのはとてもやりがいのある仕事でした。
しかし、世の中Eコマースがうなぎ上りに台頭してきた時期ということもあり、その店舗でも「ネットショップでの売上を如何に拡大するか」ということに焦点を当てていました。
今までにない手法でワインを販売してゆくことに刺激はありましたが、キーワード重視で「売れるワインを多数販売してゆく」という手法にどうしても馴染めませんでした。
そして、「1人1人のお客様に最適なワインを会話の中から提案していきたい」という想いから、次のステップに進むことを決めました。
The Winery Tokyoへのきっかけは?
「ニューヨークの個性的なワインショップが東京に支店を出す」という話を聞きつけたため、すぐにオーナーにお話を伺う機会を頂きました。
・小規模生産者や家族経営のワイナリーを応援したい
・世界中のまだ知られぬ生産地のワインを、消費者に届けたい
・日常的に楽しめる価格帯のワインをもっと浸透させたい
・自然に敬意を払ってはいるものの、ビオ臭の強いようなワインは礼賛しない
などワインに対する想いに相通ずるところがあり、意気投合して一緒にお店を造ることになりました。
そのオーナーは1年の3/4程度をニューヨークで暮らしというライフスタイルだったので、店舗運営はまるで自分の店であるかのように献身的に行ってきました。
自分のワインに対する想いを嘘偽ることなく消費者に伝え、それに共感してくださる。
決して多数とは言えないけれどコアなお客様に支えられ、お店も私も成長させてもらいました。
合同会社ヴァインフラを設立した理由は?
自分の想いをお客様に伝え、それに共感してくださるお客様のために店舗運営をすることはこの上なく楽しいものでした。
しかし、一店舗の店長では出来ることに限界があるという事に気付き、自分にはもっと出来ることがあるのではないかと、自分が出来ることを毎日のように考えました。
そこで気付いたことは、
「ワインの知識に長けている人は多くいるが、その知識をお客様に還元している店舗が多くない」
ということ。
これはどこの業界でも似ていると思いますが、専門知識を持てば持つほど難しい説明をしたがる人が多い傾向があります。
いかに素晴らしい知識を持っていようが、お客様に伝わらなければ全く無意味なのです。
私がお客様にワインの話をするときには「いかに専門用語を使わずに簡単に伝えるか」という事を最大限に意識しています。
これが出来ればワインを好きな方がもっと増え、ワインを媒介としたコミュニケーションがより豊かになる世の中が出来上がるのではないかと考えております。
ワインの魅力をきちんと消費者に伝えられる店舗サポートをしていこうと、独立を決意しました。
「日本人のワインの消費量を3年以内に1リットル上げる」という目標をヴァインフラで達成するために日々活動しております。
ワイン初心者の方に一言
こだわりを持ってワインに接してきた私ですが、結局のところ「知識はワインのつまみ」であり、「何を飲むかより誰と飲むか」の方が大事だと思っています。
初心者だからといって臆することなく、とにかくワインが好きだという気持ちだけで良いので、気軽に色々なワイン会に参加して頂きたいです。
ワイン会というとハードルが高いと感じられる方が多いのですが、想像されているよりもフランクにワインを楽しんでいる方が多いです。
ワイン知識を語りたがる人はあまり居ませんし、そういう方はワイン好きにも嫌がられるので自然と居なくなります。笑
ただし、最近はワインブームから「ワイン会という名のただ利益のためにやっている飲み会」も増えてきたように感じます。
こういうワイン会では、美味しいワインやテーマに合ったワインというよりも、原価の低いあまり美味しくないワインを出すことが多いです。
出来れば、ワインにこだわりのある主催者が厳選したワインが飲み比べられる会にご参加ください。色々な美味しいワインが楽しめるはずです!
私もワインの試飲会などを自分でやっておりますが、2ヵ月に1回程度ワインホームパーティさんでもご協力させて頂いておりますので、そちらにぜひお越しください!
ワイン会でお会いできることを楽しみにしてます!
まとめ
秋元さん、ありがとうございました!
ソムリエさんって専門用語を使って難しい事を説明する人のことだと思っていましたが、秋元さんのように初心者に向けた話をしてくださる方がいるとワインが身近に感じますね!
私もワインの消費量を1リットル上げるために、いつもより多めに飲むようにします。笑
プロフィール
秋元賢介
合同会社ヴァインフラ代表
日本ソムリエ協会認定ソムリエ
“The Winery Tokyo”や”ワインショップ・エノテカ”など、通算15年に渡りワインショップ店頭にて店長職として従事。
専門用語を如何に使わずにワインの魅力を一般消費者に伝えるかについて腐心し続ける。
いち店舗にいるだけではワインの魅力をより多くの伝えきれないとの想いで、2018年1月起業。
一般消費者がよりワインを好きになってもらえるようなイベントやセミナーを主催するとともに、
ワインのプロである飲食店や酒販店のソムリエが、より消費者にワインの魅力を伝えられるようにするためのコンサルティング活動も実施。