ワインスクールに通う前に知っておきたいワイン勉強法|シニアソムリエが徹底解説

シニアソムリエのクボイです。今回から「ワインの勉強法」について複数回に分けて解説をしていきます。

将来ソムリエやワインエキスパートの資格の取得を考えている方や、ワインが大好きで詳しい知識を習得したい方に向けて、まずはワインの初歩的なことから紹介していきます。

ワインスクールに通う場合でも、事前にある程度自分で勉強しておくと更に習得が早いです。この記事で必要な基礎知識を身に付けていきましょう。

また、こちらの記事ではワインの勉強に重要なテイスティングに最適なおすすめワインをご紹介しております。併せてご参考ください。

ワインの勉強は何からはじめるの?

ワインの勉強はソムリエなど資格試験を受験する方から趣味でワインを学ぶ方など、目標により勉強方法が異なります。まずはワイン初心者の方が自分で勉強するために、以下のような項目からはじめます。

1.酒類の分類とワインのタイプ

酒類全般の大まかな分類とワインのタイプを覚えましょう。

2.ワインの醸造方法

赤、白、ロゼワインやスパークリングワイン(シャンパーニュ)などタイプ別の醸造方法の違いや醸造用語を覚えましょう。

3.ワインの歴史

ワインの発祥地や文化、世界に広がった歴史的な経緯や人物を覚えましょう。

4.ワイン用の代表的なブドウ品種

世界中の広い地域で栽培されている国際的なブドウ品種や産地ならでは土着品種を覚えましょう。

5.代表的なワイン産地

ヨーロッパをはじめとする『北半球』やオーストラリアなど『南半球』の代表的な産地の特徴を覚えましょう。

6.ワインのテイスティング方法

ワインの色、香り、味わいを分析するためにはテイスティングのトレーニングが重要です。ブドウ品種や産地の違いによる特徴を覚えましょう。

7.料理との相性(マリアージュ)

ワインと相性の良い料理や産地の郷土料理などを覚えましょう。

8.ワインの楽しみ方

コルクの抜栓方法やグラスの選び方、ラベルの読み方など実際にワインを楽しみ方などを覚えましょう。

資格試験にチャレンジ

ワインの基礎知識を学び更に勉強をしたい方は、一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)が認定する『ソムリエ』や『エキスパート』の資格試験にチャレンジしてみるのも良いでしょう。

シニアソムリエ直伝!ワインスクール通い前に知っておきたいワイン勉強法|#1勉強のはじめ方

ソムリエ(sommelier)とは?

まずソムリエという呼称についてですが、日本ではよく『○○ソムリエ』とワインに無関係なものにもソムリエと呼ぶ傾向がありますが、本来ソムリエ(sommelier)とは『荷馬車の馬』や『動物の使い手』の意味を表すラテン語『ソーマリウス(saumarius)』が語源といわれています。

また古代ギリシャでは『集会』の際にワインが振る舞われていたそうで、その会の進行役を勤めていた『エノホイ』といわれる職業がソムリエのはじまりともいわれています。

その後、12〜13世紀頃にフランス圏で『ソムリエ(sommelier)』と変化しました。王様の旅行の際に荷物の運搬の仕事を仕切る役割から、宮廷で食事とワインを管理する者をソムリエ(sommelier)と呼ぶようになります。

現在のように『ワインの専門職』として定着したのは18世紀『フランス革命』の後です。王族制度がなくなり、王様の料理番をしていた『料理人』や『ソムリエ』が各地に広がり、『ビストロ』や『レストラン』などの料理店が街に出来ていきました。

ソムリエになるには?

まだ日本ではフランスのような国家資格でありませんが、現在2つの団体が認定する『資格』があります。『日本ソムリエ協会(JSA)』認定する資格が一般的で、毎年資格試験が開催されています。

主な認定資格と受験条件は以下のとおりです。

ソムリエ

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【一般】

以下の職務を通算3年以上経験し、第一次試験日においても従事している方

【会員】

会員歴が2年以上あり、以下の職務を通算2年以上経験し、第一次試験日においても従事しているJ.S.A.正会員および賛助 会員所属者。

  • アルコール飲料を提供する飲食サービス。
  • ワイン・酒類飲料の仕入れ、管理、輸出入、流通、販売、教育機関講師、酒類製造。
  • アルコール飲料を取り扱うコンサルタント業務。

※2016年以降、以前あったワインアドバイザー資格という資格はなくなり、ソムリエに統一されました。

ソムリエ・エクセレンス

受験資格

  • 協会認定のJ.S.A.ソムリエおよびJ.S.A.ワインアドバイザー。
  • ソムリエおよびワインアドバイザー資格認定後3年目を迎える方。
  • 以下の職務を通算10年以上経験し、第一次試験日においても従事している方。

ワインエキスパート

受験資格

  • 酒類、飲料、食全般の専門的知識、テイスティング能力を有する方。
  • 職種、経験は不問。
  • ソムリエ職種に就かれていて受験に必要な経験年数に満たない方。

認定試験の流れ

【ソムリエ】

  • 一次試験(筆記)→ニ次試験(テイスティング)→三次試験(サービス実技)→合格後認定。

【ワインエキスパート】

  • 一次試験(筆記)→ニ次試験(テイスティング)→合格後認定。

それでは早速勉強していきましょう。

シニアソムリエ直伝!ワインスクール通い前に知っておきたいワイン勉強法|#1勉強のはじめ方
サントリー公式HP参照

1.酒類の分類とワインのタイプ

【酒類の分類】

お酒は製法により、大きく3つに分類されます。
果実や穀物を酵母によってアルコール発酵させて造ったお酒のことです。

果実原料:ワイン(ブドウ) 、シードル(りんご)穀物原料:日本酒(米)、ビール(麦)
※紹興酒も穀物を原料にした醸造酒です。

    • 蒸留酒:醸造酒を蒸留しアルコール度数を高めたお酒のことです。

ウイスキー(麦)、ブランデー(ブドウ)、ジン(穀物類)ウォッカ、(穀物類)ラム(さとうきび)、テキーラ(竜舌蘭)焼酎(芋・麦・米ほか)など。
※主なブランデーにはコニャック、グラッパ(ブドウ原料)やカルバドス(りんご原料)などがあります。

    • 混成酒:醸造酒、蒸留酒に果実や香味成分、糖分などを加えてたお酒のことです。

(ベルモット、リキュールなど)
※みりんや薬用酒も混成酒の一種です。

【ワインのタイプ】

ワインのタイプは大きく4つに分類されます。

スティルワイン

非発泡性のワインのことで、一般的な赤ワインや白ワイン、ロゼワインのことです。

※スティルとは『静かな』という意味があります。

スパークリングワイン

発泡性ワインの総称です。ブドウ果汁を発酵させた時に発生した二酸化炭素(炭酸ガス)をワインと一緒に瓶詰めするのが一般的な製法です。

タンクで発酵させて大量に生産することの出来る『シャルマ方式』瓶内で1本ずつ発酵させる『シャンパーニュ方式(メトード・クラシコ、トラディショナル方式)』などがあります。

※安価なスパークリングワインには、出来上がったワインに後から炭酸ガスを注入するものもあります。

■主なスパークリングワイン

  • シャンパーニュChampagne(フランス/シャンパーニュ地方産のもの)
  • クレマンCrement(シャンパーニュ以外のフランス産のもの)
  • カヴァCava(スペイン産のシャンパーニュ方式のもの)
  • スプマンテSupmante(イタリア産のスパークリングワインの総称)

※シャンパーニュ方式以外はエスプモーソEspmosoと呼ばれる。

フォーティファイドワイン

酒精強化ワインとも呼ばれ、醸造過程のワインにブランデーなどのアルコールを添加して度数を高めたワインです。

代表的なものはスペインの南部の『シェリー』やポルトガルの『ポートワイン』などがあります。アルコール度数は約15度〜20度で、味にコクと深みを与えます。

※他にもイタリアのマルサラやポルトガルのマデイラなどがあり、主に料理のソースなどに使用されることが多いです。

フレーヴァードワイン

ワインにハーブやスパイスなどの抽出液や果汁を加えたものです。別名アロマタイズドワインともいわれます。

イタリアの『チンザノ』、フランスの『ノイリー』などのヴェルモットやオレンジやレモン果汁を加えたスペインの『サングリア』などが代表的です。

※ギリシャの伝統的なフレーヴァードワインに『松ヤニ(松の木から分泌される天然樹脂)』で風味付けした『レッチーナ』というものもあります。

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2.ワインの醸造方法

ワインは原料のブドウをアルコール発酵させて造るお酒で、熱処理などは行いません。

【赤ワインの造り方】

赤ワインは主に『果皮』が黒い『黒ブドウ』を使用して造られます。

除梗(じょこう)・破砕(はさい)

収穫した黒ブドウを選別して、枝や茎を取り除く『除梗(じょこう)』という作業したあと、果汁を抽出しやすくするために潰す作業『破砕(はさい)』を行います。

アルコール発酵

赤ワインは破砕したブドウの『果皮』と『種子』を一緒に発酵させます。果皮からは赤ワイン特有の鮮やかな色合い『アントシアニン』、種子からは渋みの成分『タンニン』が抽出されます。発酵には酵母が使用され、ブドウの糖分を『アルコール』と『炭酸ガス』に分解します。ワインのタイプにより異なりますが、大体25℃〜30℃くらいの温度で約2〜3週間発酵させます。発酵にはステンレスタンクや樽などが使用されます。

発酵時に炭酸ガスが発生するため、果皮と種子が液面に浮かんできます。それを『先がT字になった専用の棒』で撹拌して発酵中のワインに沈めます。これを『ピジャージュ(Pigeage)』といい日本語では『櫂入れ(かいいれ)』と呼ばれる作業になります。また、発酵中のワインを下から抜き取り、液面に散布して循環させる『ルモンタージュ(Remontage)』という作業も行います。ルモンタージュは別名『パンピングオーバー(pumping over)』ともいわれます。

この作業を繰り返して、果皮のアントシアニンと種子のタンニンを液体に抽出させながら発酵させていきます。この発酵の工程を『マセラシオン(Maceration)』といいます。

圧搾(あっさく)

発酵の終わったワインを圧力で搾る作業を『圧搾』といいます。この時、自然に流れ出すワインのことを『フリーランワイン』といい、果皮や種子などを圧搾機で圧力をかけて搾り出すワインを『プレスワイン』といいます。

一部の高品質なワインは圧搾後に『マロラクティック発酵(乳酸発酵)』という作業が行われます。ワインには様々な『酸』が含まれています。主に『リンゴ酸』『クエン酸』『酒石酸』などの有機酸で、味わいにも『酸味』の角が立ちます。

マロラクティック発酵はワイン中の『リンゴ酸』が『乳酸菌』の働きで『乳酸』に変化する反応で、ワインの酸味をまろやかしてくれます。

主に高級ワインなどに行われる工程で、赤ワイン以外にも白ワインでも行われることがあります。

※フランス語ではマロラクティック・ファーメンテーションMalo-lactic fermentationといわれます。

その後、さらに深みを与えるために『樽』で熟成させるワインもあります。

澱引き(おりびき)

発酵後に樽やタンクに『沈殿物』が溜まります。この沈殿物は『澱(おり)』といわれ、主に死んだ『酵母』のかたまりです。澱はワインに雑味を与えてしまうので、一般的には『澱引き』を行い取り除きます。

清澄化(せいちょうか)・濾過(ろか)

ワイン中に浮遊している不純物を取り除く作業です。卵白やゼラチンなどを使用します。卵白のタンパク質がタンニンなどと結合して不純物と一緒にタンクや樽の底に沈澱します。そのためワインの液体部分は澄んだ状態となります。この作業てで残りの沈殿物を取り除きます。

※野生酵母など天然酵母を使用したワインで、無濾過(むろか)』で瓶詰めする『にごりタイプ』のものもあります。

瓶詰め

完成したワインを瓶に詰めて、『コルク』や『スクリューキャップ』で栓をしてラベルを貼り出荷されます。

※ワインによってはラベルを貼らず、貯蔵庫で寝かせて『瓶熟成』を行うものもあります。

【白ワインの造り方】

除梗(じょこう)・破砕(はさい)

収穫した白ブドウを選別して、除梗(じょこう)・破砕(はさい)作業を行います。赤ワインと違い、一般的には『果皮』と『種子』は取り除かれます。

一部の白ワインでは、味わいにコクを与えるため『スキンコンタクト(skin-contact )』という作業を行います。これは破砕後に果汁と果皮を発酵までの一定期間、低温で浸ける製法です。白ワインですが、果皮からの『色素』や『タンニン』が抽出され味わいに深みが出ます。

※赤ワインの製法で造られる白ワイン『オレンジワイン』などに行われます。
※一部『黒ブドウ』の果皮を取り除いて造られる白ワインもあります。

圧搾(あっさく)

白ワインは赤ワインと違い『果汁』を発酵させます。発酵前に先に『圧搾』して、果汁を搾る作業を行います。一般的には圧搾した『果汁』を低温で数時間置き、不純物を沈澱させる『デブルバージュ(Debourbage)』という工程を行います。この工程により『輝きのある色合い』に仕上がります。

アルコール発酵

圧搾した果汁に酵母を加えて、アルコール発酵を行います。白ワインは『フレッシュ感』を与えるために大体15℃〜20℃の低温で発酵を行います。また、一部の高品質な白ワインの場合は赤ワイン同様に『マロラクティック発酵』と樽やステンレスタンクによる熟成を行います。その際、澱からアミノ酸などの旨み成分を抽出するため、ワインと澱を撹拌する『バトナージュ』(Batonnage)』という作業を行います。

発酵後は赤ワイン同様に『澱引き』『清澄化(せいちょうか)・濾過(ろか)』『瓶詰め』して出荷されます。白ワインでは『卵白』や『牛乳』から抽出される『カゼイン、ベントナイト』と呼ばれる粘土などが使用されることもあります。

※一部のワインは貯蔵庫で瓶熟成されます。

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【ロゼワインの造り方】

ロゼワインには基本的に3つの醸造方法があります。

除梗(じょこう)・破砕(はさい)

収穫した黒ブドウや白ブドウを選別して、除梗(じょこう)・破砕(はさい)作業を行います。

①セニエ法

セニエとはフランス語で「血抜き」を意味し、一般的なロゼワインの造り方です。まず赤ワインの製法で短時間醸造を行います。薄くロゼ色になったところで、一旦圧搾して液体を抜き取ります。その後、圧搾した『発酵途中の果汁』を最後まで発酵させます。つまりはじめは『赤ワインの製法』で、途中から『白ワインの製法』を行う造り方です。

② 直接圧搾法

破砕した『赤ワイン用の黒ブドウ』を圧搾して白ワイン同様に『果汁』を発酵させます。圧搾した際に黒ブドウの『果皮』から抽出される『アントシアニン』により、ほのかにロゼ色となります。

③ 混醸法

黒ブドウと白ブドウを混ぜて、赤ワイン同様に発酵させる製法です。程よいロゼ色にするためのブドウの割合はワインにより様々です。

※基本的に出来上がった赤ワインと白ワインをブレンドして造ることは、EUのワイン法上禁止されています。一部フランス・シャンパーニュのロゼはブレンドを許可されています。

発酵後は赤ワイン、白ワイン同様に『澱引き』『清澄化(せいちょうか)・濾過(ろか)』『瓶詰め』して出荷されます。

※日本ではロゼワインは『甘口』のイメージがありますが、世界的にはロゼワインの大半は『辛口』です。

【スパークリングワインの造り方】

スパークリングワインの造り方には様々あり、細かい部分は国や地域によって異なります。基本的には『スティルワイン』同様ですが、発酵時に発生した『炭酸ガス』を一緒に封じ込めるところが特徴です。

代表的な造り方は以下の4つに分けられます。

シニアソムリエ直伝!ワインスクール通い前に知っておきたいワイン勉強法|#1勉強のはじめ方

①シャンパーニュ方式(瓶内二次発酵)

メトード・トラディショナルやメトードクラシコとも呼ばれます。通常のスティルワイン同様に発酵させたワインを瓶に詰めて『酵母を加え』1本ずつ二次発酵させていく製法です。フランスの『シャンパーニュ』が代表的です。

  1. 除梗(じょこう)・破砕(はさい):収穫した黒ブドウや白ブドウを選別して、除梗(じょこう)・破砕(はさい)作業を行います。
  2. 圧搾(あっさく):破砕したブドウを圧搾して果汁を取り出します。ロゼの場合は黒ブドウの果皮から色素を抽出させます。
  3. 清澄化(せいちょうか):圧搾して果汁を清澄して不純物を取り除きます。
  4. アルコール発酵(一次発酵):ブドウ品種や畑や産地など区画毎に分けて、別のタンクで発酵させます。まず通常のワイン同様の『ベースワイン』を造ります。
  5. マロラクティック発酵(乳酸発酵):生産者により、酸味をまろやかにするための『マロラクティック発酵(乳酸発酵)』を行います。
  6. アッサンブラージュ(Assamblage):数年前に収穫したブドウで造った『リザーブワイン』など、年度の違うワインをブレンドする『アッサンブラージュ』という作業を行います。各メーカーの『味わいの根幹』に関わる重要な工程となるので、ブレンド専門の『職人』が行います。
  7. ティラージュ(Tirage)瓶詰め:一次発酵で造ったベースワインを瓶に詰め、『糖』と『酵母』を合わせた『リキュール』を添加します。リキュール・ド・ティラージュLiqueur de Tirageと呼ばれます。
  8. 瓶内二次発酵:リキュール・ド・ティラージュにより、瓶内で二次発酵が起こります。発酵したブドウの糖分が『アルコール』と『炭酸ガス』となります。酵母は澱となり瓶底に沈澱します。
  9. 瓶熟成:瓶内二次発酵後、澱と一緒に瓶熟成を行います。シャンパーニュでは『N Vノンヴィンテージ(年号のないもの)』は15ヶ月、『ヴィンテージ(年代物)』は35ヶ月の熟成期間が法で定められています。
  10. ルミアージュ(動瓶)Remuage:瓶内二次発酵により発生した澱を取り除くため『瓶口に集める』シャンパーニュならではの工程です。伝統的には『ピュピトル』という澱下げ台に瓶口を下にして挿し、一日1/8づつ回しながら徐々に倒立させていき瓶口に澱を集めます。期間は生産者により異なりますが、4週間〜数ヶ月かけて行われます。ルミアージュはデリケートな作業のため、基本的に『職人の手』により行われます。最近では『ジャイロパレット』というコンピュータ制御された自動動瓶機で実施することも多くなってきています。
  11. デゴルジュマン(澱抜き)Degorgement:ルミアージュにより瓶口に集めた『澱』を取り除く工程です。ルミアージュで逆さまになった状態で、澱の集まった瓶口部分を『-16~-20度のブラインという『塩水や液体窒素』などで冷凍します。仮の栓を外すと『瓶内のガス圧』で凍った澱の部分が押し出されます。※ ジャック セロスやジャクソンなど高級シャンパーニュメゾンでは、古いシャンパーニュではないことの証明として、デゴルジュマンの日付がラベルに記載されています。
  12. ドサージュ(リキュール添加)Dosage:デゴルジュマンの際に目減りした分をワインにブドウ由来の糖分を加えた『リキュール』を添加して補います。甘味の調整などシャンパーニュの味わいを調整する役割もあり『門出のリキュール』ともいわれます。※リキュールはLiqueur d’Expedition / リキュール・デクスペディシオンといわれ、その糖分の量により甘辛度が変わってきます。(詳細はシャンパーニュの回で解説します。)
  13. 打栓Habbiage(アッビアージュ) ラベル貼り:コルクで栓を打ち、ガス圧でコルクが飛ばないように金具(ミュズレ)で固定する工程です。最後にキャプセルを巻いてラベルを貼り、出荷または貯蔵庫でストックされます。

※デゴルジュマン、ドザージュ、アッビアージュにも『専門の職人』がいますので、その分通常のスパークリングワインよりも『人件費』が多くかかります。
※他にもシャンパーニュ方式(瓶内二次発酵)で造られる代表的なスパークリングワインにスペインのカヴァやイタリアのフランチャコルタなどがあります。

②シャルマ方式(密閉タンク方式)

メソード・シャルマとも呼ばれます。大容量のタンクなどでベースとなるスティルワイン造ります。そのタンクに酵母を加え密閉して『二次発酵』を行います。短期間で一度に多くのスパークリングワインが造れるため、コストダウン出来ることがメリットです。

※瓶内二次発酵以外のスパークリングワインの大半がシャルマ方式を用いて造られています。

※代表的なシャルマ方式のスパークリングワインはイタリアのスプマンテ、プロセッコなどです。

③ メトード・リュラル(田舎方式)

メトード・アンセストラルとも呼ばれます。発酵途中のワインを瓶に詰め、残りの発酵を瓶内で行う製法です。一次発酵で発生した炭酸ガス瓶内に封じ込めます。

※瓶内二次発酵とは違い、途中で酵母の添加は行いません。

④トランスファー方式

瓶内二次発酵で造られた『炭酸ガスを含むワイン』を『加圧タンク』に移し替え、冷却、ろ過を行い、瓶に詰め変える製法です。前述した『トラディショナル方式』の『ルミアージュ(動瓶)』や『デゴルジュマン(澱抜き)』の工程が簡略化されます。

※シャンパーニュ地方ではトランスファー方式による製法は法律で禁止されています。

【フォーティファイドワインの造り方】

醸造のワインに『ブランデー』などの蒸留アルコールを加えるのがフォーティファイドワイン製法です。

  1. 除梗(じょこう)・破砕(はさい):収穫した黒ブドウや白ブドウを選別して、除梗(じょこう)・破砕(はさい)作業を行います。※ポートワインやマディラの高級なものは、機械を使用せず『人の手』で作業を行うものもあります。
  2. 圧搾(あっさく)/アルコール発酵:白ワインは圧搾して取り出した『果汁』を発酵します。赤ワインは流れ出た『果汁』と『果皮や果肉』などを一緒に発酵を行います。白ワインは15℃前後、赤ワイン25℃前後の温度で発酵を行います。通常のスティルワインとは違い、発酵工程は3〜4日と短期間で終わらせます。発酵が進んだら、ブドウを原料とした『蒸留アルコール』を添加します。蒸留アルコールは『発酵を止める』目的で使用されます。『無色透明』で『度数が60~80度以上』と高いため香りや色合いは特に良くありません。
  3. 熟成:タイプにより熟成期間は異なりますが元々保存性を高めるために造られたことから、通常のスティルワインよりも『長期熟成』にも耐えられます。特にポートやマデイラなどの『ヴィンテージ』ものには、数十年の熟成期間を経たものもあります。
  4. 澱引き:ポートワインやマデイラのような赤ワインには澱引きを行いますが、シェリーのような白ワインや樽熟成の期間が短かったものには行われません。
  5. 清澄化(せいちょうか)・濾過(ろか):通常のスティルワイン同様に『卵白』『ゼラチン』『カゼイン』などが使用されます。
  6. 瓶詰め:全ての工程が終了したら、瓶詰め・打栓が行われ出荷されます。フォーティファイドワインは長期熟成にも耐えられるため、瓶詰め後も貯蔵庫でストックされる場合もあります。

※スタンダードなタイプの『ルビーポート』は規定により熟成期間が最低3年と決められています。

【フレーヴァードワイン造り方】

代表的なフレーヴァードワインの造り方を紹介します。

ヴェルモット:イタリア、フランスを中心に生産されているフレーヴァードワインです。白ワインベースに『ニガヨモギ』など多数の香草や薬草で香味付けしています。チンザノやノイリーなどがあります。
アペリティフ・ワイン:ワインに薬草や木の根などのエキスで香味付けしたワインです。滋養競争や健康効果を目的としたワインです。デュボネなどがあります。
サングリア:ワインにオレンジやレモンなど果汁とフルーツを加えて造られたスペインのワインです。

※ホットワインとして知られているドイツの『グリューワイン』もフレーヴァードワインの一種になります。クリスマス時期に温めた赤ワインにシナモンやスパイスなどを入れて楽しみます。

ワインの勉強におすすめなワインセット

こちらの記事より、ワインの勉強におすすめのワインセットや教材をご購入いただけます。

<ワインの勉強におすすめなワインセット>

  • ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 白ワイン飲み比べハーフボトル6本セット
  • ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 赤ワイン飲み比べ6本セット
  • 【ソムリエ試験対策 赤6本セット】カベルネソーヴィニヨン・ピノノワール・シラー
  • 【ソムリエ資格の試験対策にも最適】ソムリエ厳選 ボディの違いが分かる赤白ワイン飲み比べセット

<ワインの勉強におすすめな参考書>

受験のプロに教わる ソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き〈2020年度版〉

<ワインテイスティング用のグラス>

国際規格準拠(INAO)テイスティンググラス G1640-6【6脚単位】

まとめ

今回は『お酒の分類』と『ワインの造り方』を中心に解説させていただきました。初心者の方でも『ワインの知識』を深めると、更にワインを飲むのが楽しくなることと思います。

また、大切な人へのプレゼントやビジネス・デートなどの会食の際にもちょとした教養が『コミュニケーションツール』としても役立つことでしょう。

ワイン勉強法は回を分けて紹介してい行きますので、是非ひとつひとつ一緒に学んでいきましょう。しっかり勉強された方は『ソムリエ』や『エキスパート』などの資格試験にチャレンジしてみるのもスキルアップにつながります。

次回のテーマは『ワインの歴史』についてご紹介します。