前回の記事では「ワイン勉強のはじめ方|主なワインのタイプ・醸造の違い」についてご紹介しました。
今回はワインの歴史と代表的なブドウ品種・産地について詳しく解説していきたいと思います。
記事の後半では「テイスティングの勉強に最適なおすすめワイン」も一緒にご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
【家飲みにおすすめ】
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ワインの歴史
【ワインの発祥は?】
まずワインの原料は『ブドウ』であるということはご存知だと思います。そのブドウは古くから地球上に存在していて、野生のブドウは『およそ300万年前』から自生していたといわれています。
また、ワインになるために必要な『酵母』は微生物として更に数億年前から存在していたことから、ブドウが発酵した『ワインの原型』といえる飲み物は人類誕生より遥か昔からあったと考えられます。
ワイン造りの始まりには諸説ありますが、一説によると『紀元前8000年頃』といわれています。グルジア(現在のジョージア)やアルメニア共和国などのある『コーカサス地方』でワインが造られ飲まれていたといわれています。
紀元前5000年頃 メソポタニア文明の古い文献『ギルガメシュ叙事詩』にはワインの醸造について記されて、また同時期にはブドウ果汁を搾るために使用していた『石臼』なども発見されています。
その後エジプトのピラミッドの壁画に『ブドウ栽培』と『ワイン醸造』の風景も描かれていたことから、紀元前4000年頃には確実にワイン造りを行っていたと考えられます。
古代ギリシャ時代には地中海にある『クレタ島』や『サントリーニ島』などでワインに関する道具や取引の経歴なども残されています。
ギリシャ神話では『ディオニソス(別名バッカス)』がワインをもたらしたといわれ酒の神として崇められていますが、一説によると現在のレバノンにあたる地域を拠点としていた民族の『フェニキア人』がギリシャに伝えワイン造りが盛んになったといわれています。
【ローマ帝国の発展とともにヨーロッパ全域に広がる】
地中海地域に伝わったワイン造りは、ローマ帝国の発展とともにヨーロッパ全域に広がっていきました。ローマ帝国の推進力となった『ローマ軍』は、侵攻した領地に農作物の種を蒔いたり『ブドウの樹』を植えて『食料の現地調達』を計りました。
そのため征服した領地にもワイン造りが定着していくことになります。
特にローマの政治家で軍人でもあった『ジュリアス・シーザー(ラテン語:ユリウス・カエサル)』による功績で『フランス(当時のガリア)』などにも侵攻し、フランス全土にブドウ畑とワイン造りが広がっていきました。
【キリスト教の布教によりワインは世界へ!】
中世の時代に入るとキリスト教の布教とともに『教会』や『修道院』が建てられていきました。ワインは『キリストの血』といわれ『ミサ用』にも使用されるようになり世界中に広がっていきました。
【大航海時代により新世界にも伝わる】
16世紀の大航海時代に入り『スペイン』や『ポルトガル』により新大陸が発見されていきました。それにより南米など『新世界(ニューワールド)』といわれる地域にもワイン造りが広がっていくことになります。
17世紀にはオランダにより南アフリカ、18世紀にはイギリスによりオーストラリア、ニュージランドに伝わっていきました。
こうしてワインは世界中に広がっていくことになります。ちなみに日本には1549年の室町時代にポルトガルの宣教師『フランシスコ・ザビエル』が持ち込んだのが始まりともいわれています。
ワインの代表的なブドウ品種
【ブドウの系統は2種】
ブドウ品種は大きく2つの系統に分けられます。
ヴィティス・ヴィニフェラ種(Vitis Vinifera) ヨーロッパ系ブドウ
主にワイン用として使用される品種です。皮や種の比率が多く、糖度と酸度が高いのが特徴です。
カベルネソーヴィニョンやシャルドネなどが分類されます。
ヴィティス・ラブルスカ種(Vitis Labrusca) アメリカ系ブドウ
主に生食用やジュースなどの原料として使用される品種です。多数の品種が存在していて、比較的果汁が多く『フォキシーフレーバー』といわれる独特な風味があります。
EU加盟国ではラブルスカ種を使用したワインの販売は認められていません。日本ではラブルスカ種を使用したワインが多数造られています。主な品種にはコンコード、ナイアガラなどがあります。
【赤ワイン用品種】
カベルネソーヴィニョン(Cabernet Sauvignon )
世界的に多く栽培されているブドウ品種といっても過言ではないのが『カベルネソーヴィニョン』です。原産は『フランスのボルドー地方』とされています。
ヨーロッパ以外では、チリやオーストラリアなどニューワールドといわれる国々でも主要品種として栽培されています。赤ワイン用として使用される黒ブドウ品種で、『濃い色調』『凝縮感のある果実味』『スパイシーな香り』『力強いタンニン』が特徴のワインに仕上がります。
メルロー(Merlot )
カベルネ・ソーヴィニヨン同様に世界的なワイン産地で栽培されています。ボルドー地方が原産のブドウ品種です。その他、アメリカやチリなど様々な産地で主要品種として栽培されています。
ボルドー地方では主にカベルネソーヴィニヨンなどとブレンドされることが多い品種ですが、アメリカやチリなどでは単一品種で造られるワインが主流です。
『濃い色調』『穏やかな酸味とタンニン』『柔らかい口当たり』が特徴のワインに仕上がります。ボルドー・ポムロール地区の高級ワイン『シャトー・ペトリュス』の品種としても使用されています。
ピノノワール(Pinot Noir )
フランスのブルゴーニュ地方が代表的な赤ワイン用のブドウ品種です。ブルゴーニュ地方以外では、北部のシャンパーニュの原料としても使用されます。
カベルネ・ソーヴィニヨン同様に、ヨーロッパをはじめアメリカのオレゴンやニュージーランドなど世界的に多くの産地で栽培されています。
また、国や産地が変わると『呼び名』も変わります。イタリアでは『ピノネロ』、ドイツでは『シュペートブルグンダー』と呼ばれます。
『澄んだ淡い色調』『イチゴのようなベリー系の香り』『柔らかいタンニン』が特徴のワインに仕上がります。熟成すると更にオレンジがかった綺麗な色調で『野性味のあるアロマ』が現れます。
シラー(Syrah) )
フランスのコート・デュ・ローヌ地方原産の赤ワイン用ブドウ品種です。濃い紫を帯びたガーネット色。凝縮感のある果実味とタンニンのある、力強い味わいの赤ワインになります。
オーストラリアではシラーズ(Shiraz) と呼ばれます。南アフリカやチリなどでも栽培されていて、栽培される気候や風土によって味が異なるのもシラーの特徴です。フランスコート・デュ・ローヌ地方の高級ワイン『コート・ロティ』や『エルミタージュ』の品種としても知られています。
カベルネ・フラン (Cabernet Franc)
フランスのボルドー地方の原産です。主にボルドーの右岸『サンテミリオン』地区やロワール地方の赤ワイン『シノン』などの品種として使用されています。カベルネソーヴィニョンよりも比較的に穏やかなタンニンで、ボルドー地方ではブレンド用に使用されることが一般的です。
グルナッシュ (Grenache)
南フランスを中心に栽培されている品種です。*スペインでは別名で『ガルナッチャ(Garnacha) 』と呼ばれています。
*柔らかなタンニンで『ハーブ』や『スパイス』のような風味があり、南フランスやオーストラリアではシラーなど力強いブドウ品種とブレンドされることが多いです。
イタリアのサルデーニャ州では別名で『カンノナウ (Cannonau)』と呼ばれます。カンノナウ・ディ・サルデーニャ はカンノナウ種を90%以上 使用しています。
ガメ (Gamay)
主にフランスのボージョレー(Beaujolais ) で栽培される赤ワイン用の品種です。ボージョレーヌーヴォーで知られているように比較的軽い酸味が豊かで、フレッシュでな香味 の『ライトボディ』なワインが中心となります。
一部クリュ・ボージョレー(Cru Beaujolais) と呼ばれる、特に優れたワインを生産している10地区ボージョレーには10年程度の熟成に耐えるものもあります。
サンジョヴェーゼ (Sangiovese)
イタリアのトスカーナ州で主に栽培されているブドウ品種です。イタリアで最も多く栽培されています。色合いは濃いルビー色をしていて、*酸味とタンニンを強く感じる果実味です。
熟成するとプルーンのような凝縮感のあるコクが感じられます。『キアンティ』や『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』* などの品種としても使用されています。
ネッビオーロ(Nebbiolo)
北イタリアのピエモンテ州やロンバルディア州などで栽培されているブドウ品種です。色合いは比較的明るく澄んだ色調をしています。若いうちは『酸味』と『タンニン』が強く感じられますが、熟成とともに複雑なアロマに変化しエレガントな果実味となります。
別名で『スパンナ』や『キアヴェンナスカ』などとも呼ばれます。イタリアを代表する高級ワイン『バローロ』や『バルバレスコ』の品種としても使用されています。
テンプラニーリョ(Tempranillo)
スペインのリオハ地区で主に栽培されているブドウ品種です。濃い紫色の色調にイチゴのような甘やかな果実味とタバコの葉のような風味が特徴です。
他の品種とブレンドされることが多く、また熟成の際に樽を使用するかしないかでワインの特徴も変わってきます。アメリカンオークの場合『バニラ』のようなリッチな果実味となりますが、ステンレスタンクで醸造熟成した場合は比較的にスッキリとした仕上がりになります。
マルベック(Malbec)
フランスの南西地方の『カオール』を中心に栽培されているブドウ品種です。別名で『コ(Cot) 』とも呼ばれます。また南米のアルゼンチンでも主要品種として栽培されています。
カオールでは『黒ワイン』といわれるほど濃い色調で、ブルーベリーのような果実味と強いタンニンが特徴です。
ジンファンデル (Zinfandel)
アメリカのカリフォルニアが代表的な産地として知られていますが、南イタリアの品種『プリミティーヴォ(Primitivo)種 』と同一品種ともいわれています。
産地によりワインのタイプは異なりますが、カリフォルニアの『ナパヴァレー』やイタリアの『プーリア州』ではアメリカンチェリーなど濃いベリー系のような甘い果実味とスパイス系のアロマが特徴となります。
糖度も高いため、アルコール度数も15%と高くなるタイプが多いです。
【白ワイン用品種】
シャルドネ (Chardonnay)
フランスのブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方が代表的な産地ですが、世界的に広範囲に栽培されているブドウ品種です。冷涼な地域では『リンゴ』のような酸味のニュアンスが強く、南半球などの温暖な地域では『パイン』のようなトロピカルな果実味が特徴となります。
また、樽熟成などするタイプでは『ローストしたナッツ』や焼いたパンのような『イースト』香などスモーキーで香ばしい風味に仕上がります。フランスのブルゴーニュ地方の『シャブリ』や『モンラッシェ』などの品種として使用されています。
ソーヴィニヨン・ブラン (Sauvignon Blanc)
主にフランスのボルドー地方やロワール地方で栽培されていますが、世界的に広範囲に栽培されているブドウ品種です。基本的に『グレープフルーツ』のような柑橘系の果実味が特徴ですが、ニュージーランドなどでは『ハーブ』系の青い香りが強く感じられます。
また別名『フュメ・ブラン』ともいわれます。フュメとは『煙』などの意味で、その名のとおり『燻した』スモーク香なども感じられます。
リースリング (Riesling)
ドイツやフランスのアルザス地方で主に栽培されているブドウ品種です。『蜂蜜』のような甘やかな香りに『ぺトロール香』ともいわれるオイルのような『石油香』が特徴です。
産地により果実味や味わいが異なり、辛口から甘口まで様々な仕上がりになります。南オーストラリアなどのニューワールドの地域でも高品質なワインが産出されています。
シュナン・ブラン(Chenin Blanc)
主にフランスのロワール地方で栽培されているブドウ品種です。その他『南アフリカ』では別名で『スティーン(Steen)』と呼ばれ広範囲に栽培されています。
フランスでは『ピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)』とも呼ばれることもあります。通常のスティルワインからスパークリングワインまで造られていて、味わいも辛口から甘口まで様々あります。
ゲヴュルツトラミネール (Gewürztraminer)
主にフランスのアルザス地方やドイツで栽培されているブドウ品種です。ゲヴュルツとはドイツ語で『スパイス』を意味します。白ブドウですが果皮が『灰色を帯びた』濃い色合いのため、ワインも『麦わら色』のように濃くなります。
『ライチ』やラベンダーのようなエレガントでエキゾチックな芳香が特徴です。辛口タイプから『貴腐ワイン』のような甘口タイプまで造られるブドウ品種です。
トレッビアーノ (Trebbiano)
イタリアのアブルッツォ州やウンブリア州のオルビエート、南半球ではオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど幅広いエリアで栽培されているブドウ品種です。
フランスでは別名で『ユニ・ブラン』や『サンテミリオン』とも呼ばれ、主に『コニャック』などのブランデー用の品種としても使用されています。透明感のある澄んだ色合いに、レモンのような柑橘系の香りと強めの酸味が特徴です。
ヴィオニエ(Viognier)
主にフランス・ローヌ地方で栽培されているブドウ品種です。その他、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカでも栽培されています。
輝きのある『黄金色』で、『白桃』や『洋梨』のような豊かな果実味が特徴です。樽を使用するか否かで仕上がりは異なりますが、比較的濃厚なワインとなります。
地域によっては赤ワインを造る際に『シラー』などと『※混醸(こんじょう)』してワインにリッチな果実味を与える場合もあります。
※混醸(こんじょう)=複数のブドウを混ぜて同時に発酵させること。また一つの畑で複数の種類のぶどうを栽培することを混植という。
アルバリーニョ(Alvarinho)
主にスペインのイベリア半島で栽培されている白ブドウ品種です。原産はポルトガルと隣接する地域の『ガリシア地方』といわれているため、ポルトガルでも栽培されています。
ポルトガルでは別名『カイーニョ・ブランコ』と呼ばれることもあります。透明感のある緑がかった色合いに『青りんご』のような爽やかな果実味と『酸味』が特徴です。
ポルトガルの緑ワインともいわれる『※ヴィーニョヴェルデ』の品種としても使用されています。近年では日本でも栽培されるようになり、新潟県の『新潟ワインコースト』などで栽培に力をいれています。
※ヴィーニョヴェルデ=ヴィーニョヴェルデとはポルトガルの微発泡の白ワインのこと。ポルトガル語でヴィーニョは『ワイン』、ヴェルデは『緑』を意味して、緑がかった色合いから『若いワイン』のことを指す。
ヴィーニョヴェルデについてはコチラの記事もご覧ください。
甲州(こうしゅう)
日本固有の品種とされていますが、起源はヨーロッパからシルクロードを経て伝来したともいわれています。山梨県の甲州市勝沼地域で栽培が盛んになりました。
『灰色ブドウ』とも呼ばれるように果皮は赤みを帯びている『薄い藤紫色』をしています。ワインの色合いは一般的に『薄いレモンイエロ―』をしていますが、『※シュールリー』などの醸造法により『濃い色合い』にもなります。
フレッシュな柑橘系の香りに酸味と『ビター』な果実味が特徴です。
※シュールリー=直訳はフランス語で「澱の上」シュールSur(上に)、リーLie(澱オリ)という意味です。醗酵中に発生した澱を取り除かずワインと一緒に数ヵ月保存して、澱由来の複雑味、旨味をワイン中に引き出す製法です。
ピノ・グリ(Pinot Gris)
フランス・ブルゴーニュ地方原産のブドウ品種で、ピノノワールの変異種ともいわれいます。フランスのブルゴーニュ地方やアルザス地方をはじめ、ドイツやオーストラリアなど世界中広範囲で栽培されています。
黒ブドウのように果皮の色合いは濃く、ワインも『深い黄金色』から『淡いピンク色』まで様々な色合いのワインとなります。『グリ』とはフランス語で『灰色=Gris』の意味です。
少し灰色がかった外観からそう呼ばれています。ワインは醸造法や産地により異なりますが、一般的にはアルザス地方のような『スパイシー』なアロマやイタリアの『強い酸味』などが特徴的です。
※その他のブドウ品種については『代表的なワイン産地』で紹介していきます。
世界のワイン産地『フランス』の基礎知識
気候について
フランスはワイン用ブドウの栽培に適した気候といわれる『※ワインベルト地帯』の北半球に属する産地です。緯度では『北緯30度~50度』に位置します。
■大陸性気候
ブルゴーニュ地方など内陸側の中部から東部地域が属しています。年間の『寒暖差の大きい』ことが特徴です。
■海洋性気候
ボルドー地方など大西洋側の西部地域が属しています。海の温暖な風の影響により『夏は冷涼』『冬は温暖』なことが特徴です。
■地中海性気候
地中海側の南東部地域が属しています。年間の『日照量』も多く、乾燥していることが特徴です。
※ワインベルト地帯=北半球は北緯30~50度、南半球は南緯20~40度に位置したワイン用のブドウの栽培に適した緯度帯のこと。年間の平均気温が10~20度で、ブドウの栽培において発芽から成熟に必要な日照時間が1000~1500時間、年間降雨量が500~900ミリという条件を満たした地域。ヨーロッパや日本などが北半球、チリやオーストラリアなどが南半球にあたります。
ワインの法律
EU(ヨーロッパ連合)加盟国では『有名産地を騙った偽物の製造』や『質の悪いワインが出回る』のを防ぐために厳密な『ワイン法』が制定されています。得に知られているのがフランスの『AOC(原産地呼称統制)』といわれる法律です。
各産地の『ブドウ品種』や『栽培方法』から『収穫・ワインの製法』などが厳格に規定されています。
現在はヨーロッパ全体で『AOP(原産地保護呼称)』としてチーズ、野菜、家畜や土壌、飼料なども規定され、2009年以降はフランスの『AOC』もAOPの一部となりました。またAOP以外のカテゴリーも消費者に分かりやすくするため、『IGP』『Vin de table』の3つの分類に変更されました。
フランスではこの『AOC(AOP)を頂点』として、下位にカテゴリーが定められています。
※AOP=Appellation d’origine protégée(アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジ)原産地保護呼称:特定の産地で生産される上級ワイン
※IGP=Indication géographique protégée(インディケーション・ジェオグラフィク・プロテジ)原産地呼称保護ワイン:生産地域を表示できるテーブルワイン
※Vin de table=(ヴァン・ド・ターブル)テーブルワイン:生産地域の表示がない下級ワイン
※現在もフランスではAOCの呼称を使用しています。
A.O.C(Appellation d’Origine Contrôlée)アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ
原産地管理呼称(原産地呼称統制)ワインの原料であるブドウの産地にあたります。1935年に制定された『AOC(原産地統制呼称法)』に基づいて『INAO(原産地呼称国立研究所)』によって制定された『最上位のカテゴリー(格付け)』です。
AOCを表記するには主に以下のようなワイン法の規定条件があります。
-
- 『原産地』で認められた『ブドウ品種のみ』を使用する。
- 『栽培方法や収穫量』を厳守する。
- 『醸造方法』と『熟成方法』を厳守する。
- 『糖度』と『アルコール度数』を厳守する
- INAOの検査を経て専門家の利き酒テストに合格する。
※その他、地域の表示など細分化されるほど規定が厳しくなります。
例えばフランスよりも→『ブルゴーニュ』、ブルゴーニュよりも→『シャブリ地区』、シャブリ地区よりも→『シャブリ1級畑ヴァイヨン』→『シャブリ特級畑ブランショ』とブドウの収穫場所が細分化されるほど規定も厳しくなります。
同じくブルゴーニュ地方に『ヴォーヌ・ロマネ』という産地があります。そのヴォーヌ・ロマネの『様々な畑で栽培収穫したブドウ』のワインよりも、ヴォーヌ・ロマネにある『特級畑ロマネコンティ』の畑から収穫されたワインのほうが厳格に管理されているということです。
ラベルの記載義務事項
原産地呼称名
ワインの原料であるブドウの産地にあたります。Appellation d’Origine Controlee(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)と読み、ラベルには『d’Origine(ドリジーヌ)』の部分に『産地名』が表記されます。
例えばボルドー地方のマルゴーという産地で造られたAOCワインには『APPELATION MARGAUX CONTROLÉE(アペラシオン・マルゴー・コントロレ)』と表記されます。
原産国名
輸出向けには『France』や『Produit de France』などの原産国が表記されています。
瓶詰め者名、所在地
ワインの瓶詰め元と住所が書かれています。またボルドーなど『シャトー元詰め』の場合は『Mis en Bouteille au Chateau(ミザン・ブティーユ・オウ・シャトー)』シャトーで元詰めしています。との表記がされています。
容量(l、Cl、ml)
レギュラーサイズのボトルの場合『750ml』または『75Cl』と表記されています。
アルコール度数(%、Vol)
ラベルの隅に%またはVolで表記されています。※ボトルの裏張りに表記されている場合もあります。
※その他任意記載事項として『収穫年』などの表記も可能です。義務ではありません。
IGP(Indication géographique protégée)インディケーション・ジェオグラフィク・プロテジ
地理的表示保護ワイン
GPは2008年以前のワイン法で『VIN DE PAYSヴァン・ド・ペイ(地酒)』に相当する『産地を表示』できるテーブルワインのことです。フランス南部のラングドック・ルーション地方で栽培されたブドウで造られるIGPワインを『IGPペイ・ドック』といいます。地域や品種などが規定されています。
Vin de Table ヴァン・ド・ターブル:テーブルワイン
生産地域の表示がない日常消費用のテーブルワインで最下位のカテゴリーとなります。*EU圏内であれば原産地、原産国の異なるものをブレンドして造ることも認められています。
*フランスで収穫されたブドウで醸造されたものは『ヴァン・ド・ターブル・フランセ(Vins de Table Français)』と名乗ることができる。V.D.T.と表示されている場合もあります。
シャトー(Chateau)とドメーヌ(Domaine)の違い
シャトー(Chateau)とドメーヌ(Domaine)
ワインにおいて『シャトー』と『ドメーヌ』という言葉をよく耳にすることと思います。
まず、シャトーとはフランス語で『城』を意味します。ワインではボルドー地方などで主に使われていて、『ブドウ畑を所有』していて『栽培・醸造・熟成・瓶詰め』までの製造を一貫して行なう生産者のことを指します。また、元々シャトー(城)を所有していた貴族がワイン造りをしていたのも名残といわれています。
一方のドメーヌとはフランス語で『所有地』や『区画』という意味がありあます。ワインではシャトー同様に『ブドウの栽培』から『醸造・瓶詰め』まで一貫して行う生産者のことです。主にブルゴーニュ地方などで使われています。
2つの違いとしてはボルドー地方の『シャトー』は生産しているワインのブドウ畑を『ひとつのシャトーが所有』しています。一方ブルゴーニュの『ドメーヌ』ではワイン畑を『複数の生産者で所有』することが一般的で、多数の生産者で『畑を分割』しています。
そのため『同一銘柄』で様々な生産者のワインが存在します。但しドメーヌでも『畑すべてを所有』する生産者もいて、そのことをフランス語で独占を意味する『モノポール(Monopole)』と呼びます。有名なものでは高級ワインの代名詞『ロマネコンティ』などがあります。
ネゴシアン(Négociant)とメゾン(maison)
また、シャトーとドメーヌの他にも『ネゴシアン』や『メゾン』なども聞いたことがあるかと思います。
ネゴシアン(Négociant)はフランス語で『交渉人』を意味し、ワイン業界では『卸売業者』のことを指します。日本語では『ワイン商』または『酒商』などともいわれます。
ネゴシアンは『自社のブドウ畑』は所有しておらず、複数の『ブドウ農家』から買い付けた『ブドウ・果汁・ワイン』を『自社で醸造または貯蔵・熟成・ブレンド』して自社ブランドとして販売します。『味わいの均一化』などが可能なため、大量に生産して海外などに流通させることが出来ます。
一方メゾン(maison)はフランス語で『家』を意味し、主に『シャンパーニュ地方』の生産者に多く呼ばれています。大半の生産者が『ブドウ栽培農家』から買い付けた『原料ブドウ』で製造しています。
メゾンには『NM(ネゴシアン・マニピュラン)』と『RM(レコルタン・マニピュラン)』の2つがあります。ネゴシアン・マニピュランは『ブドウ栽培農家』から買い付けたブドウでシャンパーニュを製造する一般的な生産者のことです。レコルタン・マニピュランは『自社で所有している畑のブドウ』でシャンパーニュを製造する生産者の事です。
ワインの勉強におすすめのフランス白ワイン5選
こちらの記事でワインの勉強におすすめのフランスワイン5選を紹介しています。併せてご参考ください。
まとめ
今回はワインの歴史や代表的な品種などワインの概論を解説しました。
ワインの勉強には『用語』を覚えることも重要です。特にブドウ品種や産地の特徴を覚えるとワインの楽しみも更に膨らむことと思います。
また、教養のひとつとして身に着けておくと『コミュニケーションスキル』としても役立つこと間違いなしです。
次回は代表的な産地『フランス』の続きを解説したいと思います。