誕生日・クリスマス・昇給のお祝い・結婚記念日・付き合った記念など、1年の中にはお祝いしたい日がたくさんあります。そんな特別な日に飲みたくなるのは、シャンパンではないでしょうか。
色も、香りも、味わいも、そしてその名前の響きからも幸せな気持ちにさせてくれるシャンパンは、パーティーやイベント等でもその存在一つで会自体が華やかな空気にさせてくれるものです。
そんな特別なシャンパンだからこそ、「何を選んだら良いのか分からない」「失敗したくない」という気持ちが強いかと思います。
そこで今回は、ワインスクールの講義は直ぐに満席となることで有名な大人気講師紫貴あき先生に、おすすめシャンパンの銘柄やその選び方などを教えてもらいました。
記事の前半では「紫貴あき先生おすすめのシャンパン銘柄や選び方」を、後半では「シャンパンの種類、規格、格付け、製造方法、村ごとの気候や土壌などの特徴、代表的な生産者」などについてまとめました。
この記事を読めば、シャンパンのことを色々知っている「シャンパン通」になれる内容になっています。ワイン初心者の方から上級者の方まで、困ったときのシャンパン選びや勉強のための参考にしてみてくださいね。
目次
【家飲みにおすすめ】
ワイン定期便「ミシュラン星付きセレクション」
今回お話を伺った先生
大手ワイン専門輸入商社にてマーケティングを経験後、単身渡米し、カリフォルニアでのワイン修行を経て帰国。現在はアカデミー・デュ・ヴァンにて、席のとれない人気講師として活躍中。ワイン専門誌での執筆、テレビ出演などワインの魅力を伝える活動を積極的に展開。J.S.A.認定シニアソムリエ /A.S.I.認定国際ソムリエ / WSET ® Level4 Diploma / WSET ® Internal Assessor / WSET® Certified Educator / Court de Master Sommelier Certified / 米国ワインエデュケータ協会認定CWE / 2008年 オーストリアコンクール優勝 / 2010年 WSET®スカラシップ受賞 / 2016年 J.S.A.ワインアドバイザーコンクール優勝 / 2018年 第2回ボルドー&ボルドー・スーペリュール・コンクール3位
紫貴あき先生は、英米の難関試験を日本人として最年少合格された実績の持ち主。ワイン専門誌の「Sommelier」や「Wine-What!?」「ワインT-BOOK」「ワインスタイル」「ワイン王国」など、様々な執筆・監修もされています。そんな紫貴あき先生に、「初心者でもわかるシャンパン選びのコツ」を聴いてみました!
初心者でも出来る!紫貴あき先生から学ぶシャンパン選び3つのコツ
シャンパーニュのおすすめの選び方をご紹介します。初心者でも簡単に出来る方法もお伝えしますので、こちらを参考に楽しみながら選んでみてください。
1. 「ブラン・ド・ブラン」か「ブラン・ド・ノワール」か
シャンパンは基本的に「シャルドネ」「ピノ・ノワール」「ムニエ」といった3つの品種がブレンドされています。
しかし、時にはシャルドネだけで造られていたり、黒ブドウ品種のピノ・ノワール、ムニエだけで造られていることもあります。
前者の場合はラベルに「Blanc de Blanc(ブラン・ド・ブラン)」、後者の場合は「Blanc de Noir(ブラン・ド・ノワール)」と記されており、この2つのラベル用語を知っていればワイン選びが楽になります。
「Blanc de Blanc」は白ブドウ品種だけでつくられていることもあり、香りに柑橘や白い花が現れやすく、豊かな酸と爽やかな味わいのものが多いです。
食前酒としてだけでなく、カルパッチョなどシーフード全体との相性が期待されます。一昔前まではシャルドネだけで仕込むことは非常に贅沢なことで、特別なシチュエーションで楽しまれてきました。
一方で「Blanc de Noir」は黒ブドウ品種のみから仕込まれており、香りには赤系ベリーやスパイシーさが現れやすく、味わいもどことなく骨格があります。発酵食品のようなすこしクセがあるものや、力強い肉料理にも合わせられます。
Blancはフランス語で「白」、Noirはフランス語で「黒」を意味します。
2. ジャケ買いもあり
シャンパンは造り手ごとにテーマカラーがあったり、モチーフがあったりするので、その日の気分で「ジャケ買い」というのも楽しいでしょう。
例えば気分を盛り上げたいときに赤いラベルのパイパー・エドシック、しっとりとした気分の時にブルーが生えるポメリーを選ぶといった具合です。
生産者はそのシャンパンをイメージしてエチケット(ジャケット)を造っています。だからこそ、飲み手の気分とジャケットが一致していれば、そのシャンパンの魅力がより一層引き立ちます。シャンパンラベルを見ての「ジャケ買い」であれば、知識がなくても気軽に選べそうですね!
音楽CDや新作コスメを心の動くままにジャケ買いするように、或いは、顔がタイプな好きなアイドルのグッズを集めるように、シャンパンも『見た目が好きなものを買おう』と思うと、敷居が低くなります。
3. NM/RMを知ればシャンパン選びの選択肢が広がる
ラベルの下に小さく印字されている「NM」「RM」という文言を見たことはないでしょうか。どちらもシャンパンを仕込む形態を表しています。
NMとは
「NM」は「ネゴシアン・マニュピユラン」の略で、造り手が契約農家からブドウを買い付けてシャンパンを仕込む形態をさします。
「NM」でもっとも有名なのはモエ・エ・シャンドンでしょう。この形態のアドバンテージは、品質&生産量の全てにおいて安定していることです。
RMとは
「RM」は「レコルタン・マニピュラン」の略で生産者自らがブドウ栽培し仕込む形態をさしています。
「RM」で有名なのはジャック・セロス、エグリ・ウーリエなどでしょう。これらの生産者は自ら畑を耕しブドウを供給していますので、NMと比べると生産量は少ないですが、こだわりのシャンパンを造っています。
おまけ!「造り手の個性」に応じた選び方ができればシャンパン通
造り手の個性を知っていることで、シャンパン選びはより一層面白くなります。
造り手の個性を少しずつ覚えていって選ぶとシャンパーニュはさらに面白くなります。例えば、ランスを本拠地とするメゾンはピノ・ノワールを得意としていたり、エペルネに軒を構える造り手はシャルドネを得意としています。
というのもシャンパーニュ地方は
- モンターニュ・ド・ランス
- ヴァレ・ド・ラ・マルヌ
- コート・デ・ブラン
という3つの有名地区がありますが、エペルネはシャルドネの名産地コート・デ・ブランに近いといった理由があるからです。
(逆にランスはコーデ・デ・ブランから交通が発達していない時代においてはシャルドネの供給が難しくピノ・ノワール中心のスタイルとなったとも言われます)
さらにコート・デ・ブランの中にもいくつかの「特級」格付けされた村がありますが、例えば「アヴィーズ村はボディがある」とか、「ル・メニル・シュール・オジェ村はミネラルが表現されやすい」といった具合に個性が語られてきました。
ル・メニル・シュール・オジェのブドウのみを使っている有名シャンパンと言えばサロンです。サロンの非常にタイトな酸と、はっきりとしたミネラル感について語られる時、この村について話題が及ぶのは玄人の間ではもはや常識なのです。
造り手の個性は、シャンパン造りのこだわり、その技術や歴史はもちろんのこと、その土地のテロワールやインフラさえも関与して『そのメゾンの色』を創りあげているということなんですね。
貪欲にシャンパンを楽しみたい方や、自分の求めているシャンパンを選びたい方は、造り手の個性を知ることで一層楽しめるようになりますね!
紫貴あき先生が選ぶ!シーン/価格帯別のおすすめシャンパン12選
様々なシーンや価格帯別で、おすすめのシャンパン12本を選びました。選んだ理由や各シャンパンの特徴も下記に掲載いたしますので、参考にしてみてください。
シーン/価格帯別おすすめシャンパン12選
※各シャンパンの紹介に飛びます。
①パイパー・エドシック
②ドン・ペリニヨン2008
③マムのマグナム瓶やジェロボアム
④ポル・ロジェ
⑤エグリ・ウーリエ・グラン・クリュ・トラディッシオン・ブリュット
⑥サロン・ブラン・ド・ブラン2007
⑦シャルル・エドシック・ブリュット・レゼルヴNV
⑧Lalarge-Pugeot Honey harmony NV
⑨ボランジェ・RD・エクストラ・ブリュット
⑩アンリオ・ブリュット・スーヴェラン
⑪テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン2007
⑫ドン・ペリニヨンP2 2002
パーティーやイベントにおすすめのシャンパン
パイパー・エドシック エッセンシエル エクストラ ブリュットNV
目に鮮やかな赤がテーマカラーのパイパー・エドシック。黄桃、トーストブレッド、アフターにふわりとキャラメルを感じます。「毎晩寝る前にシャネルNo5(香水)をつけ、毎朝グラス一杯のパイパー・エドシックで目覚める」とマリリン・モンローが愛したことでも有名なシャンパンです。
ドン・ペリニヨン2008
1990年代、2000年代のノーベル賞の授賞式で採用された数が多いのがドン・ペリニヨン。品質はもとより安定供給されていることが大規模なパーティーなどに採用される背景にあります。シナモンのようなスパイシーさとトーストブレッドなどの香り、酸味がしっかりしており力強い味わいが特徴です。
マム・グラン・コルドンのマグナム瓶やジェロボアム
シャンパンの醍醐味はボトルサイズが豊かなことです。1500mlをマグナム、3000mlをジェロボアムと呼び、パーティーでは大人数にふるまわれるのが一般的です。そのため大型瓶は非常に重宝されます。何よりも見た目の華やかさは格別です。マムはF1でのシャンパンファイトでもみかける有名ワイン。ますます盛り上がること間違いなしです。
※上記はマグナムサイズです。
特別な記念日におすすめのシャンパン
ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルヴ
ロイヤルウェディングに好んで使われるシャンパンの1つです。元イギリス首相チャーチル氏をも虜にしたメゾンであることもあまりにも有名です。シャルドネ33%、ピノ・ノワール33%、ムニエ33%と3つの品種をほぼ均等にブレンドし、すべては「バランス」に集約されています。それでも奥深さを感じるのは手作業によるルミアージュやリザーヴワインの使い方ゆえなのでしょうか。
エグリ・ウーリエ・グラン・クリュ・トラディッシオン・ブリュット
「ピノ・ノワール」の魔術師の異名をとるエグリ・ウーリエ。ブレンドの70%をしめるピノはアンボネイ村を主体としています。フランボワーズのような赤系フルーツに樽熟成のニュアンス、そしてミネラルを感じます。何とも言えない艶っぽい香りはブルゴーニュから特注している樽の影響でしょうか。
サロン・ブラン・ド・ブラン2007
誰もが羨望するワイン。それがサロン。シャルドネの聖地「メニル・シュール・オジェ」村の良作年のブドウだけを使っています。サロンが造られなかった年は「ドゥラモット」になります。鋭角な酸とミネラルが豊かで、若いうちに飲むと白ワインにもかかわらずその厳めしい味わいに驚かされることでしょう。結婚記念日など特別な記念日に飲みたいシャンパンです。
ワイン通へのギフトにおすすめのシャンパン
シャルル・エドシック・ブリュット・レゼルヴNV(8000円)
ノン・ヴィンテージのブリュットの中でもこだわりを感じるシャンパン。瓶熟成4年熟成、リザーヴワイン40%使用などこの価格帯の中ではお買い得感があるシャンパンです。固い青リンゴにブリオッシュ。フレッシュさと熟成感が同居する素晴らしい1本です。
Lalarge-Pugeot Honey harmony NV
「Honey harmony」の名前の通り、ドサージュにハチミツを添加しています。トップノーズにアカシアや菩提樹、またハチミツというと甘くてドロッとイメージがありますが、抑制のきいた清楚な味わいです。珍しいシャンパンを探している人と飲みたい逸品です。
ボランジェ・RD・エクストラ・ブリュット
「RD」は「Recemment Degorge」(最近デゴルジュマンされた)という意味。つまり長い瓶熟成を象徴しています。そのため香りにはハチミツやローストナッツが幾層にも重なります。クリーミーな口当たりも心地よく、それでいてフレッシュさもあります。まさに「細マッチョ的」なシャンパン。こびない力強さがファンを虜にしています。
自分へのご褒美におすすめのシャンパン
アンリオ・ブリュット・スーヴェランNV
シャルドネ50%、ピノ・ノワール45%、ムニエ5%とシャルドネの比率が高めなのがポイント。白い花、ミネラルを思わせる香り、それでいて酸が鋭角すぎず、シャルドネ主体にしてはふくらみを感じるシャンパンです。ほっと一息つきたいときには最適なご褒美です。
テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン
サロンと並びブラン・ド・ブラン好きを唸らせる1本。白桃に焙煎コーヒーのような香り、酸による緊張感と果実のふくらみのバランスが最高です。サロンがル・メニル・シュール・オジェのシャルドネのみを使うのに対して、アヴィーズ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェをブレンドしています。
ドン・ペリニヨンP2 2002
「熟成はミステリー。海千山千の経験を積んだテイスターでも開けてみないとわからない」その「飲み頃」を100年スパンで研究しているのがかの有名のドン・ペリニヨンです。ドン・ペリニヨンは3回のピークを迎えます。1度目はリリース直後、この時ですでに8年は熟成していました。そして2度目はその2倍の16年後。P2のPはプレニチュード=飲み頃を表しています。シャンパンの熟成を体験するためにも一度は開けたい1本です。
紫貴あき先生への質問コーナー
紫貴あき先生に、シャンパーニュやワインに関することをいくつか質問してみました。
シャンパーニュにどんなイメージを持っていますか?
<ポジティブ>
選ぶシーンを選ばない唯一の酒。嬉しい時にも悲しい時にも飲めます。
<ネガティブ>
ややイメージが先行してしまうこと。
どんなときにシャンパーニュを飲みますか?
・祝いの時(クリスマス、お正月、誕生日、結婚記念日)
・門出の時(転職、開店祝い、飛行機、進学祝い)
・悲しい時(親友を慰める時、失恋)
シャンパーニュでの失敗談は?
ワインの勉強を始めたころに上手く開けられなくて苦戦しました。ワイン会で「ポンっ」と大きな音を立てて抜栓してしまったことなどです。
正直なところ、もらって嬉しいシャンパーニュの銘柄・価格帯は?
ストーリー性のあるものや、品種の選択、木樽、リザーヴワイン、こだわりの造りをしているシャンパンが嬉しいです。
シャンパーニュはお家で飲む派?外で飲む派?
家族となら自宅でゆっくり飲むのが好きです。寿司や天ぷらと合わせるなど食とのマリアージュを体験したいなら断然外で飲みたいです。
シャンパーニュはみんなでワイワイ飲みたい?二人でしっとりと飲みたい?
どんなシャンパンかにもよると思います。
モエ・エ・シャンドンのような誰にでも愛されるワインは、披露宴や大掛かりなパーティーでワイワイ飲みたいですし、プレミアムシャンパンは2人でしっとり飲みたいです。
最後にシャンパーニュの楽しみ方について一言お願いします。
海外に旅行に行くと驚かされるのはワインの楽しみ方がとても自由だということ。
日本では「こうでなければならない」とグラスの選択、供出温度、相性料理などありとあらゆる点で「型」にとらわれている人が多いような気がします。
もっとシャンパンを好きになるためには、まずは気軽に楽しんでほしいと思います。
紫貴あき先生、ありがとうございました!
特別なワインではあるものの、やはり「気軽に楽しむ」ことも大切ですね。シャンパン選びの参考にしていただければ幸いです。
前半は「おすすめのシャンパン、選び方」などをご紹介しましたので、ここからは「シャンパンの規格、製造方法、製造工程、代表的な生産者」などについて、なるべく詳しく解説していこうかと思います。
他にも「おすすめのシャンパンやスパークリングワインを知りたい」という方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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コスパ最高!安い上に美味しいシャンパン・スパークリングおすすめ10選
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【基礎知識編】シャンパンとは?規格や製造過程について詳しく解説
ここからはシャンパンの規格や製造工程などについて、なるべく詳しくわかりやすく解説します。
どこかで聞いたことがあるかもしれませんが、『シャンパン』と名乗るためにはいくつかの約束事を守る必要があります。それ故に、シャンパンは他のスパークリングワインより特別な立ち位置として存在しています。
一言でシャンパンと言っても、その品種や業務形態、糖度等には違いがあります。まずは「シャンパンと名乗るための規則」について知っていきましょう。
シャンパンと名乗るためには
1936年6月29日、シャンパーニュは原産地統制名称(AOC)に認定されました。AOCに認定されるということは、国(フランス)が品質を保証しているということと同時に、品種、栽培法、剪定法、醸造法などすべての基準をクリアしないといけないということでもあります。
その主な規則はこちら。
- 制限された生産地域
- 使用ブドウ品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、アルバンヌ、プティ・メリエ
- ブドウの木の剪定方法:ロイヤ、シャブリ、ギュイヨー、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ
- 1ヘクタール当たりのブドウ収穫量の制限
- 圧搾で得る搾汁量
- 収穫時における最低潜在アルコール度数
- 瓶内二次発酵と瓶内澱熟成期間;ノンヴィンテージワインで15か月、ヴィンテージワインでは3年
また、2015年7月4日、「シャンパーニュの丘陵・メゾンとカーヴ」がユネスコ世界遺産に登録されました。シャンパーニュワインを生んだこの地方のブドウ栽培・ワイン製造の文化的景観の顕著な普遍的価値が世界的に評価されたのです。
シャンパンのできる地域
シャンパーニュ地方は、パリから140kmほど東に位置し、TGVを使えば、パリ東駅からシャンパーニュ地方のランスまで45分なので、パリ観光の際に足をのばしやすい地域です。気候は、年間平均気温11度と冷涼で、ブドウ栽培地として北限に位置します。
シャンパンを製造できるのは、フランスのシャンパーニュ地方の限られた地域だけです。具体的には、フランス国内の5県(マルヌ、オーブ、エーヌ、オート・マルヌ、セーヌ・エ・マルヌ)にまたがる、AOCシャンパーニュの地域にある320の市町村で造られています。
とは言っても、7割はマルヌ県が占めていて、次いで2割はオーヌ県、他の3県に属するブドウ畑はごく小さいものです。ブドウ畑の面積は全体で約34000ha、約15000軒の栽培農家が耕作しています。
その数字を見て想像がつくように、小規模農家が多いため、メゾンと呼ばれる大手生産者にブドウを供給する形態が一般的です。有名なメゾンとしては、皆さんもご存知のモエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコ、ドン・ペリニョン等があります。
パリからもシャルル・ド・ゴール空港からもアクセス良好なシャンパーニュ地方。パリ観光に追加して本場のシャンパンを満喫するのもオススメです。
シャンパンを構成する品種
シャンパンを造るのに使用して良いブドウ品種として一般的に知られているのは、シャルドネ(白ブドウ)、ピノ・ノワール(黒ブドウ)、ピノ・ムニエ(黒ブドウ)の3つです。実際、栽培されているブドウの99%以上はこの3品種が占めていますし、これら3品種の個性・特徴を知っていれば、自分好みのシャンパーニュを選ぶのに十分な指標となります。
シャンパンの多くは、黒ブドウと白ブドウをブレンドして造られます。白ブドウで主に使用されるのはシャルドネで、黒ブドウでよく使用されるのはピノ・ノワールと、ムニエです。
ブレンドをすることが前提のシャンパンの中では異色となりますが、白ぶどう(シャルドネ)のみで造られたシャンパンをBlanc de Blancs(ブラン・ド・ブラン)、黒ブドウ(ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ)のみで造られたシャンパンをBlanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール)と呼びます。
あまり目にすることが少ないかも知れませんが、AOCシャンパーニュに使用が認められている品種はその他にもアルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリといった白ブドウもあります(合計作付面積は全体の0.3%にも至りませんが)。
最近では、これらの品種が使われている銘柄も存在するので、探してみるのも面白いかも知れませんね。
シャンパンがどんな品種でできているかを知ることで、自分好みのシャンパンを見つけやすくなります。
シャンパーニュの格付け
ブルゴーニュやボルドーと同様、シャンパーニュ地方でも格付けが存在します。ブルゴーニュでは区画単位、ボルドーではシャトー単位で格付けがされていますが、シャンパーニュ地方では村単位で格付けが行われています。
各村に対して、80~100%までのパーセンテージで格付けが行われ、100%格付けの村はグラン・クリュ(Grand Cru )、90%~99%格付けの村はプルミエ・クリュ(Premier Cru )に認定されています。
そして、グラン・クリュで採れたブドウのみから造られたシャンパーニュは、グラン・クリュ(特級)、プルミエ・クリュで採れたブドウのみから造られたシャンパーニュはプルミエ・クリュ(1級)とラベルに記載することが認められています。
最上級の格付けであるグラン・クリュ(特級)には以下があります。※( )内は村の数です。
【モンターニュ・ド・ランス地区(9)】
①アンボネー(Ambonnay)
②ボーモン・シュル・ヴェスル(Beaumont sur Vesle)
③ブージー(Bouzy)
④ルーボア(Louvois)
⑤マイィ(Mailly)
⑥ピュイジュー(Puisieux)
⑦シルリ(Sillery)
⑧ヴェルズネー(Verzenay)
⑨ヴェルジ(Verzy)
【ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区(2)】
①アイ(Ay)
②トゥール・シュル・マルヌ(Tours-sur-Marne)
【コート・デ・ブラン地区(6)】
①シュイイ(Chouilly)
②オワリィ(Oiry)
③クラマン(Cramant)
④アヴィーズ(Avize)
⑤オジェ(Oger)
⑥ル・メニル・シュール・オジェ(Le Mesnil sur Oger)
その地域で取れるブドウの個性を知ることは、その地域のブドウでシャンパンを造っているメゾンの個性を知ることとほぼ同様と言っても過言ではありません。
あなたのシャンパンライフがより一層豊かになるよう、グラン・クリュの村がひしめく3地区の特徴と代表的なメゾンをご紹介します。
(1)モンターニュ・ド・ランス地区
モンターニュ・ド・ランスは、フランス最北のワイン産地で、日本語で訳すと「ランスの山」という意味。シャンパーニュの中心地であるランスとエペルネの間に横たわる標高が300メートルにも満たない山というよりは丘のような地域です。
その裾野を取り囲むように隙間なくぶどう畑が広がっています。シャンパーニュ地方全体のぶどうの約8割近くを生産しており、グラン・クリュ村の数はシャンパーニュ地区で最多の9つ、プルミエ・クリュも22の村が指定されています。
そして、モンターニュ・ド・ランスの特徴といえば、何といってもピノ・ノワールの品質が高いことでしょう。シャルドネもムニエも栽培されていますが、黒ブドウ品種、特にピノ・ノワールから造られるシャンパン、ブラン・ド・ノワールでは、上質なものが多く造られています。
その立地から、高級シャンパンとして有名なクリュッグ、ヴーヴ・クリコ、ロデレール、テタンジェなど大手メゾンがここモンターニュ・ド・ランスに本拠地を構えています。
気候
大西洋の影響を受ける大陸性気候で、年間平均気温が10度と冷涼な地域です。しかし、この冷涼な気候のおかげで、シャンパンに不可欠な高い酸のあるブドウ造りが可能となっています。
また、北向きの斜面のブドウ畑を有していることも特徴の一つ。北半球における北向き斜面の畑は、北風と日照量が乏しいため、一般的にはワインの栽培には向いていないとされています。
モンターニュ・ド・ランスでは、東と西に太陽の光を遮るものが無いため、その結果、日照量が豊富となり北向き斜面でのぶどう栽培が可能となっています。
北向き斜面でも日照量が確保できるモンターニュ・ド・ランスは、ブドウ栽培に適した地域なんですね。その中でも、南向きのエリアにある、ブジー村とアンボネー村は素晴らしいピノ・ノワールを産出することで有名です。
土壌
白亜の石灰質土壌が地層深くまであり、浅い位置は粘土質です。
モンターニュ・ド・ランス地区の代表的な生産者
- モエ・エ・シャンドン:ランス
- ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン:ランス
- テタンジェ:ランス
- G.H.マム:ランス
- シャルル・エドシック:ランス
- ローラン・ペリエ:ランス
- ルイ・ロデレール:ランス
- クリュッグ:ランス
- ポメリー:ランス
- アンリ・ビリオ:アンボネイ
- エグリ・ウーリエ:アンボネイ
- ムーゾン・ルルー・エ・フィス:ヴェルジィ
- ブノワ・ライエ:ブジー
- ビルカール・サルモン:マレイユ・シュル・アイ
- シャルトーニュ・タイエ:メルフィー
- フレデリック・マルトレ:シャメリー
- ユレ・フレール:リュード
- ミッシェル・アルノー・エ・フィス:ヴェルズネイ
(2)ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区
ヴァレ・ド・ラ・マルヌは、日本語で訳すと「マルヌ川渓谷」という意味。シャンパーニュ地方の中央を東西に横切るように流れるマルヌ川は、最後にはパリのセーヌ川に合流しています。
マルヌ川両岸のV字渓谷に沿い、80km以上に渡ってブドウ畑が広がっています。ブドウ畑が広がる斜面は緩やかにマルヌの川岸へと続き、マルヌ川流域に沿う美しい小さな谷へと下っていきます。グラン・クリュは2村、プルミエ・クリュは11村指定されています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌは、川沿いで谷が多く湿度が高いため、霜の影響を受けやすい地域です。そのため、開花が遅くて収穫が早く、病害にも強く丈夫なピノ・ムニエが多く栽培されています。
地域の東側ではピノ・ノワール種、西側ではムニエ種が主に栽培されてますが、作付け比率はピノ・ムニエが8割近くを占めています。2つあるグラン・クリュのうち『トゥール・シュル・マルヌ』村は黒ブドウのみがグラン・クリュとして認められており、栽培面積が狭く収穫量が非常に少ないので、南向きの大きな斜面が東西に広がり、日照に恵まれた『アイ』村に大手メゾンは集中しています。
また、ピノ・ムニエが主要品種という事からどちらかというと玄人向けのシャンパーニュ地区といわれています。
渓谷沿いのヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区のリスクでもある春の霜害。この地区の自然要因に合った品種がピノ・ムニエです。
気候
大西洋の影響を受ける大陸性気候で、年間平均気温が10度と冷涼な地域です。この冷涼な気候のおかげで、シャンパンに不可欠な高い酸のあるブドウ造りが可能となっています。ぶどう畑は主に南向きの斜面に広がっているため、日照に恵まれ、特に南向きの谷が開けた場所では素晴らしいピノ・ノワールが生み出されます。
土壌
石灰岩、泥灰岩、粘土質、砂質と多様な土壌から構成されています。地層深くでは、褐色土壌もあり、水はけの良さと保水性を持っています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の代表的な生産者
- ボランジェ:アイ
- ドゥーツ :アイ
- ムータルディエ・ダルトワ:トゥール・シュル・マルヌ
- ペリエ・ジュエ:エペルネイ
- ポル・ロジェ:エペルネイ
(3)コート・デ・ブラン地区
コート・デ・ブランは、日本語で訳すと「白い丘」という意味。ランスの南、シャンパーニュ中央部ヴァレ・ド・ラ・マルヌの東南にあります。ブルゴーニュを代表する生産地シャブリとも近い位置関係です。グラン・クリュは6つ、プルミエ・クリュは9つ指定されています。
そして、コート・デ・ブランといえば、「ブラン・ド・ブラン」の聖地。シャンパーニュの中でも単一品種、シャルドネ100%で造られるブラン・ド・ブランが有名です。そのため、栽培するぶどうのほとんどはシャルドネで、作付け比率も95%以上をシャルドネが占めています(何と、ピノ・ノワールとムニエを併せても5%にも満たないんです)。
コート・デ・ブランで造られるシャンパーニュは、ミネラルを豊富に含み卓越したエレガンスさを備えています。そのため、錚々たるメゾンの上級キュベがこの地で造られています。
代表的なメゾンでは、クリュッグ、サロン、ロデレール、ドゥーツ、ボランジェなど高級シャンパーニュの代表たる面々です。また、現在のレコルタン・マニピュラン・ブームのきっかけとなったジャック・セロスの本拠地がある産地としても知られ、優れたRMが多く存在します。
気候
大西洋の影響を受ける大陸性気候で、冬と夏の気温差は激しくはなく、平均気温は11度と冷涼です。ブドウが成熟する最低温度と言われている10度程度の冷涼な気候で、シャンパーニュの生産に不可欠な高い酸のあるブドウ造りを可能にさせています。畑は、日照に恵まれた東向き斜面で、日照時間は2100時間に及ぶこともあるほど多く、ブドウ栽培に適した素晴らしい条件を兼ね備えています。
土壌
土壌は世界一密度の高い白亜石灰質土壌で「白亜のシャンパーニュ」とも呼ばれています。
コート・デ・ブランの白亜石灰質土壌で育ったミネラル豊富なブラン・ド・ブラン。The シャンパーニュのイメージにぴったりです。
コート・デ・ブラン地区の代表的な生産者
- ジャック・セロス:アヴィーズ
- アグラパール・エ・フィス:アヴィーズ
- ギィ・シャルルマーニュ:ル・メニル・シュル・オジェ
- クロード・カザル:ル・メニル・シュル・オジェ
- ピエール・ペテルス:メニル・シュル・オジェ
- シャンパーニュ・ド・ラ・ルネッサンス:オジェ
- R & L ルグラ:シュイイ
- ランスロ・ピエンヌ:クラマン
シャンパンの製造方法
ここからは、シャンパンの基本的な製造過程をご紹介します。細かく分けると下記13工程に分かれています。
1.収穫(Vendange)
シャンパーニュ地方では、9月半ば~10月に収穫が行われます。収穫は、ブドウ品種や区画毎に行われます。また、大切なブドウが傷まないように丁寧に手摘で行われます。
2. 選果(Epluchage)
収穫されたぶどうは選別され、未成熟なブドウや傷んでいるブドウは取り除かれます。手作業で行われるため、労働力とコストがかかりますが、原料ブドウの選別は良いシャンパン造りには欠かすことのできない作業です。
3.圧搾(Pressurage)
その名の通り圧力で搾ることです。収穫したぶどうをつぶして、ワインの基となるぶどうジュースにします。圧搾機にはいろいろな種類がありますが、シャンパーニュ地方では、独特の底の浅い大きな円型の圧搾機が使われています。
規則では、4000kgのブドウから最大 2550ℓまで果汁を搾ることが許されています。1番搾りの2050ℓを「キュベ(Cuvée)」2番搾りの500ℓを「タイユ」と呼びます。キュヴェのほうがピュアでフレッシュ、豊かなアロマをもち、長期の熟成に向いた果汁が得られます。因みに、3番搾りはシャンパンの製造に使うことは禁止されています。
4. 清澄(Debourbage)
ぶどうを圧搾して得た果汁には不純物が含まれています。発酵前に、この不純物を取り除く作業を「清澄」といいます。
タンクの中で約12~24時間果汁を静かに休ませ、タンクの底に不純物を沈殿させます。この時のタンクの温度は、摂氏 5度くらいに保ち、アルコール発酵が自然に始らないようにします。そして、上澄みの果汁のみが次の発酵行程に移ります。
5.一次発酵(Fermentation alcoolique)
シャンパンの一次発酵は、果汁をワインに変えるアルコール発酵です。酵母が糖分を「食べ」、アルコール、炭酸ガス、そして、ワインの官能的成分を造り出します。
ブドウ品種毎や畑毎に別々の木樽やステンレスタンクに入れられ、1~2週間の期間をかけ、白ワインが造られます。この段階のワインを「リザーブ・ワイン」と呼ぶのですが、この時点ではスティルワインであり、シャンパンではありません。リザーブワインは、様々なシャンパンのブレンドの礎となる大切なワインで、どれだけリザーブワインを確保できるかが、シャンパン造りに大きな影響を与えます。
6.調合(Assemblage)
一次発酵を終えたスティルワインをブレンドしてシャンパンの原酒を造る、シャンパーニュの醸造において、もっとも重要な行程です。異なる品種や畑、過去のリザーブワイン(ノンヴィンテージの場合)等を各醸造家のブランドイメージに沿って、ブレンドしていきます。50以上の異なるワインをアッサンブラージュすることも珍しくないほどで、長い経験と鋭敏な感覚が必要とされます。シェフ・ド・カーヴ(セラーマスター=醸造責任者)の指揮のもと、その比率は各醸造家ごとの企業秘密となっています。
7.瓶詰め(Tirage)
瓶内二次発酵に向け、アッサンブラージュされたワインに酵母とショ糖の入ったリキュール加えて瓶詰めすることをティラージュといいます。
通常1ℓあたりおよそ24gの糖が加えられますが、使用できる糖はビーツかサトウキビから精製されたものに限られます。これらを瓶に詰めた後、一般にはポリエチレン製の澱溜まりをつけた王冠で打栓し、石灰岩の地下貯蔵庫で寝かします。
8.瓶内二次発酵(Deuxieme Fermentation)
シャンパンといえば、瓶内二次発酵ですね。別名シャンパーニュ方式と呼ばれるこの工程は、約2ヶ月間かけて、ゆっくりとワインを二次発酵させます。瓶内で、ショ糖が酵母の働きでアルコールと炭酸ガスに分解され、炭酸ガスはワインの中に溶け込んでいきます。瓶内二次醗酵が終わると活動の終えた酵母が澱となり瓶内に残り、そのまま熟成に入ります。1ℓあたり24gの糖から生じる炭酸ガスの圧力は摂氏10度で約6気圧。アルコール度数は1~1.5度ほど上昇します。
9.瓶内熟成/澱と共に熟成(Maturation sur lie)
瓶詰めされたシャンパンは、温度が常に約12℃に保たれる地下貯蔵庫の中で長い熟成期間に入ります。
澱と共に寝かせることによって、アミノ酸である澱は自己分解をはじめ、シャンパンにトーストのような香ばしいフレーバーや旨みを与えます。
規定では、ノンヴィンテージで最低15カ月(そのうち12カ月は澱とともに瓶熟成)、ヴィンテージは3年間、プレステージ(特級)は5年の熟成期間が義務付けられています。
熟成期間が長ければ長いほど、複雑なフレーバーが生まれ香りが豊かになり、味わいの奥行きも深く厚みが増し、炭酸ガスがきめ細やかに液体に溶け込むようになります。
10.動瓶(Remuage)
長い熟成期間を経た後には、澱を取り除き、シャンパンに再び透明性を取り戻す必要があります。
手作業で行うルミアージュでは、澱を瓶口に集めるために、熟成時に横に寝かされていたボトルを逆V字型をした「ピュピトル」といわれる専用の澱下げ代に瓶口を下げて並べ、職人が毎日8分の1ずつ回転させながら徐々に倒立(シュール・ポワント)させていきます。
ルミアージュは、シャンパン作りのなかでも最もデリケートな作業といわれており、期間的には生産者により開きがありますが、4週間~4ヶ月かけて行うところもあるようです。ここまで期間が長い理由としては、単純に澱を落とすというだけではなく、ゆっくりと酵母となじませる意味もあります。
最近では「ジャイロパレット / Gyropalette」と言われるコンピュータ制御の回転式収納ケースで機械化しているところが多いですが、マグナム以上のサイズや、プレステージ・シャンパーニュ、少量生産者などでは、今でもルミアージュ職人が手作業で行っているところもあります。
11.澱抜き(Degorgement)
ルミュアージュによって瓶口に集められた澱を除く作業がデゴルジュマンです。方法としては、瓶口をマイナス20℃の塩化カルシウム水溶液に漬けて瓶口に集められた澱を瞬時に凍らせます。次に王冠を抜くと、たまった澱のシャーベット部分のみが瓶内のガス圧で飛び出し、澱だけが取り除けるという仕組みです。
現在はこの作業も自動化が進んでいますが、小規模醸造家や、長期熟成のためコルクでティラージュ(瓶詰め)されているシャンパン等は、いまでも手作業によりデゴルジュマンが行われています。
瓶口を凍らせず、倒立状態から垂直に持っていく絶妙のタイミングで栓を抜き、澱を吹き飛ばす。この方法を「デゴルジュマン・ア・ラ・ヴォレ」と呼びます。
12.リキュール添加(Dosage)
「ドサージュ」と呼ばれる糖分添加は、高い酸味とのバランスを取るためと、ルミアージュでで減った容量を補う役割で行われます。つまり、最終的なワインを微調整し、造り手が求める最適なバランスのシャンパンを造るために行います。
このドサージュに使われるリキュールを「リキュール・デクスペディシオン(門出のリキュール)」といい、この糖の量によってシャンパンの辛口、甘口の差が生まれます。この糖の量による甘味度合いの表記がAOCによって以下の6段階に規定され、ラベルに表示されています。
【最終的な1ℓ当たりの糖分量】
- Brut Naure(ブリュット・ナチュール)/Pas Dode
(パ・ドゼ)/Dosage Ze
ro(ドサージュ・ゼロ):3g/ℓ以下 - Extra Brut (エクストラ・ブリュット):0~6g/ℓ
- Brut(ブリュット):12g/ℓ以下
- Extra Dry (エクストラ・ドライ):12~17g/ℓ
- Sec(セック):17~32g/ℓ
- Demi Sec (ドゥミ・セック):32~50g/ℓ
- Doux (ドゥー):50g/ℓ以上
12、打詮(Bouchage)
ドサージュが終わったシャンパンの瓶に、圧力でコルクが飛び出さないように金属のワイヤーで固定する打栓作業のことです。シャンパーニュのコルクには必ず「CHAMPAGNE」の刻印がなければならならず、ヴィンテージの場合は収穫年の表記も義務づけられています。また、金属製の円盤とワイヤーのことを「ミュズレ」と呼ぶのですが、このミュズレのコレクションをするシャンパン愛好家も少なくありません。
13、ラベリング(Habillage)
打栓後のシャンパンはドサージュが馴染むまで、さらに数カ月貯蔵庫で寝かせられ、いよいよ出荷という段階になったら最後にラベルを張りシャンパンは無地、製造完了。市場へ流通されることになります。
シャンパン生産者の業務形態
シャンパーニュの生産者には多様な形態があります。その業務形態を説明しているのが、エチケットの隅に小さく記載されているアルファベット2文字の業務記号です。
この記号でどのような事が分かるのかを知れば、シャンパン選びの指標の一つになることでしょう。
■NM(ネゴシアン・マニュピラン)
農家から原料となるブドウを仕入れて醸造を行う業務形態のこと。生産されるシャンパンの大部分を占める。大手企業が多く、品質や価格が安定していることが特徴。
<代表的な生産者>
モエ・エ・シャンドン
ヴーヴ・クリコ
ボランジェ
ポメリー
クリュッグ等
■RM(レコルタン・マニピュラン)
ブドウ農家自らが自社畑で収穫したブドウを使用し、ブドウ栽培から瓶詰めまでを行う業務形態のこと。大手には無い個性的なシャンパンが造られる利点がある一方、生産量が少ないため、入手が困難なことや価格が高騰することも。
<代表的な生産者>
アグラパール
ジャック・セロス
ドメーヌ・ヴィルマール
エグリ・ウーリエ
アンリ・ビリオ等
■CM(コーペラティブ・ド・マニュピラン)
協同組合に所属するブドウ農家が栽培したぶどうを合わせて醸造を行い、協同組合のブランドで販売する業務形態のこと。 ニコラ・フィアット
<代表的な生産者>
ボーモン・デ・クレイエール
ドゥヴォー
ジャカール等
■RC(レコルタン・コーペラテュール)
以下の2つの業務形態
・醸造設備を持たない栽培農家が協同組合の設備を使用して醸造を行い、自身のブランド名で販売する
・加入している協同組合から原酒や出荷準備ができているシャンパンを買い取って、自社ブランドとして販売する
<代表的な生産者>
クロード・カザル
アルロー
シャンシーラ
エルヴィ・ケナルデル等
■SR(ソシエテ・ド・レコルタン)
複数のレコルタン・マニピュランから成るブドウ栽培業者団体。同じ団体に属している会員の畑で収穫されたぶどうで醸造を行い、オリジナルブランドで販売する業務形態。
<代表的な生産者>
アンドレ・クルエ
ギィ・シャルルマーニュ
等
■MA(マルク・ダシュテール)
有名レストランやホテル、百貨店などの顧客からのリクエストにより、顧客のプライベートのブランドとして造られる業務形態。
<代表的な生産者>
有名ホテル(リッツやペニンシュラ等)
有名レストラン(タイユヴァンやトゥールダルジャン等)
■ND(ネゴシアン・ディストリビュテュール)
他のシャンパーニュ生産者が製造したシャンパーニュをボトルになった段階で購入しし、自社工場で自社ブランドのラベルを貼付し販売する業務形態(ディストリビューター)。
まとめ
シャンパンをもっと楽しむために
いかがでしたでしょうか。シャンパンと一言で言ってもそのスタイルや内容は様々です。だからこそ、型にはまることなく、自由にあなたスタイルで楽しむことができる、それがシャンパンです。
そして、一つ確かなことは、一本のシャンパンがあなたの手元に届くまでには、多くの人の想いと労力、ドラマが詰まっているということ。そんな思いを馳せながらいただくシャンパンはより一層あなたの五感を満たしてくれるでしょう!
インタビュアー紹介
今回は紫貴あき先生に色々なお話を伺いました。あなたにとって「特別な一本」を見つけるきっかけにしていただければ幸いです。
日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート / SAKE Diproma
毎月1〜2回、銀座・表参道・麻布十番等でワイン会(viva wine)を開催している。viva wineは、今年で4年目を迎え参加者の延べ人数は1000名を超える。
viva wineのコンセプトは、J’aim erais t’apporter beaucoup de petits bonheurs.(小さな幸せを貴方に)。いつもより少しドレスアップして普段と違う自分を愉しむ特別な空間を提供。ワインを通してご縁を紡ぐ活動を行なっている。