シャトー・ラトゥールの名前はワインを嗜む方なら一度は耳にしたことがあると思います。1855年の第一回パリ万博においてナポレオン3世の命によりボルドーメドック地区のワインの格付けが行われました。
その際シャトー・ラトゥールはシャトー・マルゴー、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・オーブリオンと並び格付け第一級の地位を獲得します(1973年にシャトー・ムートン・ロートシルトが昇格し五大シャトーとなります)。
現在も不動の人気を誇り五大シャトーの中でも特に品質が安定していることでも知られています。
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シャトー・ラトゥールの歴史
ラトゥールは「塔」と言う意味であり、ワインのエチケットにはシンボルである塔が描かれています。
シャトー・ラトゥールの歴史上最初の記載は1311年、塔の建設の許可状が記録として残っており、当時塔の名前はサン・モベールの塔と言いイギリスとの百年戦争の際要塞として機能しましたが、争乱の中で破壊されてしまいました。
現在建っているのは後に再築されたサン・ランベールの塔と言う鳩小屋として造られたものでワインのエチケットに描かれるものとは異なります。
シャトー・ラトゥールは18世紀、ニコラ・アレキサンドル・セギュール侯が畑を継いだ頃にワイン造りが進み飛躍的に評価が高まります。
セギュール侯はブドウ畑のプリンスの異名を持ち、ラトゥールのワインは通常の4~5倍の価格で取り引きされていました。
その後、1962年までセギュール家の末裔で構成された会社組織に引き継がれ、1963年イギリスのピアソングループが所有し外国資本となります。
それ以降五大シャトーの中でいち早く近代化に取りかかりステンレスタンクを導入し2000年代に入ると醸造設備を一新し、コンピューターで温度管理を行い熟成を新樽で行うなど、栽培や醸造技術を革新によりさらなる品質の向上と安定を確立します。
また近代的な設備を有するシャトー・ラトゥールの醸造施設は類い稀な清潔さが保たれていることでも知られています。
現在はフランスのフランソワ・ピノー氏がオーナーとなり、醸造責任者はフレデリック・アンジュレ氏を据えて、卓越した資金力による設備と醸造技術で世界最高レベルのワインを産み出しています。
ラトゥールの地形や設備
シャトー・ラトゥールはフランスボルドーメドック地区ポイヤック村の最南端のサンジュリアン村との境にあり、シャトー・レオヴィル・ラスカーズと隣接しています。
シャトー・ラトゥールのグランヴァンに用いられる畑はランクロという47ヘクタールの特別な区画で育てられています。畑の地質は表土は砂利質で水捌けが良く、下層は粘土質で根の水分を保ち水不足の年も地中の水分がブドウの樹を守ります。
メドックを流れるジロンド川はブドウの生育に大きな影響をもたらします。シャトー・ラトゥールはジロンド川から300メートルの距離にあり、川の輻射熱が成熟を早め過度の温度変化から畑を守る役割を果たすので霜害が比較して少なく、被害が大きかった年において七割の新芽が被害を受けた中、ランクロの区画は3割程度の損害で収まりました。
シャトー・ラトゥールのグランヴァンは最低十年以上の樹齢のブドウから造られており、平均樹齢は40年です。80万本のブドウ樹は毎年全体の3%程を植え替えを行っており、古い樹と新しい樹が混植されていて、収穫の際混ざらないように若木には印がつけられ手摘みで区別されています。
また五大シャトーの中で、いち早くビオディナミに転換し、2018年にはエコセールのビオロジックの認証を受けました。2012年にはワインが安定してから出荷をするためプリムールから撤退し、品質追求をしています。
シャトー・ラトゥールの特徴
シャトー・ラトゥールのワインは五大シャトーの中でもヴィンテージに左右されることが少なく最も安定した品質でも知られています。
グランヴァン以外にも樹齢の若いものや品質に満たないと判断されものはセカンド、サードとして販売されています。セカンドワインはレ・フォール・ド・ラトゥール、サードはル・ポイヤック・ド・ラトゥールといいます。
シャトー・ラトゥールは年月が経つにつれ良くなっていくと言われており、酒質はとりわけ男性的で力強く飲み頃は15年以上経てから迎えられ、50年以上の熟成にも耐えられるものもある程長命で晩熟です。
シャトー・ラトゥールの当たり年
雑誌『ワインアドヴォケイト』を創刊したワイン評論家ロバート・パーカー氏による評価を点数化したパーカーポイントは100点を満点として、96点以上を並外れたワインと評価しており、96点以上の年は以下です。
【2000年代】2010・2009・2005・2003・2002・2000
【1900年代】1996・1995・1990・1982・1970・1966・1961・1959・1949
なかでも2010・2009・1982・1961は百点満点と評価しています。
以下パーカーポイントが100点のワインをご紹介します。
ロバートパーカーが100点をつけただけではなく、ワインアドヴォケイトと肩を並べるアメリカのワイン雑誌『ワインスペクテーター』でも99点、マスター・オブ・ワインのティム・アトキンも99点をつけた一生に一度は飲んでみたい偉大な年の偉大なワインです。飲み頃はまだ先ですが、じっくり寝かせていつかの時を楽しみにしたいワインです。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:138000円
2010と並び近年の評価が著しく優れているヴィンテージです。こちらもロバートパーカー100点、ワインスペクテーター99点など各方面での評価は揃って高い年です。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:130000円
シャトー・ラトゥールの醸造責任者フレデリック・アンジュレ氏が2015・2010・2009という偉大なヴィンテージのある中でも最良のカベルネソーヴィニヨンの出来であり、傑出したキュヴェと太鼓判を押す伝説の年です。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:130000円
ロバートパーカー氏が100点をつけ、イギリスのワイン評論家でもあり、ポケットワインブックの著者でもあるヒュー・ジョンソン氏も最高評価をつけたヴィンテージです。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:138000円~
パーカーポイント100点、かつ飲み頃を迎えており、今後のまだまだ熟成も可能なヴィンテージです。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:464000円
半世紀以上の時を経て、晩熟、長命であるラトゥールの熟成による真価が発揮されている偉大なヴィンテージです。ロバートパーカーが何回飲む機会があっても常に100点をつける傑出したワインです。
- 原産国:フランス
- 産地:ボルドー メドック ポイヤック
- 格付け:AOC ポイヤック
- 品種:カベルネソーヴィニヨン メルロー カベルネフラン プティヴェルド
- タイプ:赤
- 生産者:シャトー・ラトゥール
- 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
- ボディ:フルボディ
- 容量:750ml
- 参考価格:898000円
まとめ
いかがでしたでしょうか。憧れのシャトーラトゥールを当たり年を含めて何点かご紹介しました。憧れのシャトー・ラトゥールのグレートヴィンテージを一度は飲んでみたいものです。
一方、近年のグレートヴィンテージと言われるラトゥールは価格も跳ね上がっており飲み頃もまだまだ先なので、他の評価の良い年やセカンド、サードを選ぶのもおすすめです。近年で90点以上の年は2001・2004・2006・2007・2008・20011です。
醸造設備を刷新した2000年代に入ってからは軒並み良い評価を得ているので、古いヴィンテージに比べて入手も比較的しやすく、価格もグレートヴィンテージに比べて抑えられているのものもいいと思います。
いつか入手して自宅のセラーで飲み頃を待つのも良いですし、良いヴィンテージの飲み頃と出会いワインの素晴らしさを経験する機会があるといいですね。