ソムリエが選ぶ本当に美味しいおすすめグラッパ5選

食後にグラッパを飲むと、胃腸を刺激して消化を助けるとともに、食事の余韻に浸って、リラックスした気持ちになります。
この記事では、数あるグラッパの中から、私が今まで働いてきた中で、本当に美味しかったグラッパを紹介します。

グラッパとは?


グラッパとは、イタリアでブドウの搾りかすを蒸留して造られた蒸留酒のことです。フランスでブドウの搾りかすを蒸留されたものは、マールと呼ばれています。
アルコール度数は30度から60度と強いので、食後酒として、飲まれたりしています。昔から庶民にも広く親しまれてきたグラッパの歴史は古く、10世紀頃から飲まれてきたと言われています。

当時ブドウを原料としたワインは非常に高価で、上流階級の人々が飲むことができる高級品で、庶民には手が出ず、ワインを醸造した後のブドウの搾りかすを蒸留して飲み始めたのが始まりです。なのでヨーロッパでは、人々の生活に広く浸透し、愛されています。

グラッパの美味しい飲み方

グラッパは、イタリアでは食後酒として定番です。食後にグラッパなどのアルコール度数の高いお酒を飲むと、胃液の分泌を促してくれる働きがあり、消化を助けます。
香りや味わいを楽しむために、氷や水を入れて薄めたりせず、ストレートで飲むことが多いです。グラッパそのものをボトルごと冷やしておいて、ストレートでいただくのがおすすめです。

冷凍庫に入れてトロッとさせて飲む方もいますが、せっかくの香りがやはり落ちますし、勿体ないです。
おすすめはしませんが、本当に美味しいグラッパではエスプレッソに入れて飲む方法もあります。また、エスプレッソとグラッパを交互に飲むのを好まれる方もいます。

Haruka KageyamaHaruka Kageyama

ご本人が美味しく飲めれば、お好みの飲み方でいいと思いますが、
香りと味わいに焦点を当てれば、お薦めはストレートです。

グラッパ・ディ・ヴィナッチャ・ディ・アマローネ・バリック/ ラルコ


イタリアヴェネト州にある1999年創業のワイナリー『ラルコ』は、ヴァルボリチェッラやアマローネで有名ですが、そのアマローネに使われた後のヴィナッチャ(ワインの搾り粕)で作られたグラッパが絶品です。

美しい琥珀色で、ダークチェリーのようなみずみずしい甘酸っぱさがあります。そして、樽熟成の深み複雑味とボリュームのあるグラッパです。非常に数が少ないのが玉に瑕ですが、見つけたら入手することをお薦めします。
美味しいグラッパを飲むと、食後のひと時が特別なものになります。

Haruka KageyamaHaruka Kageyama

単体でも楽しめますし、バリックのニュアンスに合わせて焼き栗や、ヘーゼルナッツを食べながら飲むとより楽しめます。

  • 原産国:イタリア
  • 産地:ヴェネト
  • 品種:ロンディネッラ、コルヴィーナ、モリナーラ
  • 生産者:ラルコ
  • 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
  • 容量:500ml
  • 参考価格:8,600円

グラッパ・ドンナ・セルヴァーティカ / ロマーノ・レヴィ



〈出典:vinaiota HP〉
天才的で伝説になったグラッパの作り手ロマーノ・レヴィ。彼は2008年に亡くなり、現在は共にグラッパ造りを行っていたファブリツィオ・ソブレロ氏が引き継いでグラッパ造りを続けています。


〈出典:MARUYAMA HP〉
可愛くて素朴な手書きのラベルには、コレクターがいるほど人気があります。このラベルはロマーノ・レヴィの魅力の一つになっていて、一枚一枚手書きで描かれている理由がとても素敵です。

グラッパは売るためのものではなく、プレゼントするものというロマーノ・レヴィ氏の想いが込められています。その時々の季節のモチーフや、その時に気分によって、可愛らしいイラストが描かれているため、一枚一枚デザインが違うのです。
コレクターになりたくなるほどに、素敵な気持ちを感じられるラベルです。
特に人気が高いキャラクターがドンナ・セルヴァーティカというかわいい女の子のデザインです。


〈出典:vinaiota HP〉
レヴィ氏のお姉さんをモチーフにしているとも言われ、気分が向いたときにしか描かれないので、とても人気で、高値で取引されています。お姉さんもグラッパ造りに参加していて、ハーブが入ったグラッパはお姉さんの担当です。
ただ今は病気がちなので、お姉さんが庭のハーブを使い、効能や組み合わせを考え抜いたハーブのグラッパは極少量になってしまいました。
種類によって風味や効能、軽やかさも変わり、セージとタイム、ローズマリーやアブサン、バジリコとレモン、レモンヴァーベナとスミレなど様々あります。

Haruka KageyamaHaruka Kageyama

お姉さんが早く元気になることを祈りつつ、たまには気分を変えて、ハーブ入りのグラッパもいいですね。

ロマーノ・レヴィのグラッパは少量生産です。なぜなら、全て手作業で行っていて、驚くほど手間がかかっているからです。
現在では、あまり使われていない昔ながらの直火式の蒸留器を使います。この直火式蒸留器は温度調節が非常に難しく、熟練の経験と知識を必要とします。蒸留後のグラッパは、トネリコ、サクラ、オーク、アカシア、栗の木と様々な樽材に入れて、熟成庫で1年から20年以上もの間寝かせられます。
また、その日に瓶詰される分のみラベルを手書きして、貼り付けし、出荷されます。

加水に関しては、アルコール度数が60度以上のリゼルヴァクラスは、熟成中にアルコールの一部が気化してしまうので、水を加えずそのままボトリングされます。そしてノーマルタイプと、ハーブ入りのタイプは加水されて、アルコール度数を48~54程度に調節します。


〈出典:グラッパハウス〉
グラッパは使用する樽によって、色味が大きく変わります。そして、熟成すればするほど色調が濃くなります。
一つ一つ違って、どれも素晴らしい味わいのロマーノ・レヴィのグラッパはいつも私に感銘を与えてくれるもので、自信をもってお薦めします。是非ご賞味ください。

Haruka KageyamaHaruka Kageyama

〇豆知識〇
使用する樽によってグラッパは色が変わります。
・トネリコやサクラ「無色透明」
・オークは「茶色」
・アカシアは「縁に赤みがある茶色」
・栗は「緑がかった茶色」 など

  • 原産国: イタリア
  • 産地: ピエモンテ
  • 品種: 主にネッビオーロ
  • 生産者: ロマーノ・レヴィ
  • 味わい:甘口☆☆☆★辛口
  • 容量:700ml
  • 参考価格:65,000円

グラッパ・ストラヴェッキア / グアルコ蒸留所


1870年創業のグアルコ蒸留所は、代々息子が父の仕事を引き継ぎ始まりました。1934年従兄弟同士のデュイリオとバルトロメオが新たに醸留所を設立し、瞬く間に人気に火が付き、イタリア一有名な蒸留所になりました。
品質の高さとカリスマ性から、現在もグラッパの魔術師と呼ばれています。その後も家族に引き継がれ、現在に至ります。

グアルコでは伝統的かつ現代では珍しい、非連続式蒸留器を使っています。これはオーストリアの職人にオーダーメイドした湯煎式の蒸留器で、2回蒸留を行うことで、一番大切なフルーツの香しさを引き出します。
使用する搾りかすは品質の良いものだけを厳選して、旬の完熟した香りの一番いいときのものを使います。品質に満足がいかなければ、その年の蒸留を行わないほどの徹底ぶりです。蒸留に関しても、徹底した温度コントロールで果物の香りが気化するのを防ぎます。こうした努力がグラッパの魔術師たる所以(ゆえん)です。
グラッパのコンテストとして世界的に有名なANAG蒸留酒の国際コンテストでは毎年賞を受賞、2009年はストラヴェッキアが銀賞を受賞しています。

ストラヴェッキアも芳醇で深みのある味わいがあります。
コルテーゼもカカオのような香りで旨味が濃く切れ味のある味わいで、一風変わっていて癖になります。

  • 原産国: イタリア
  • 産地: ピエモンテ
  • 品種: ドルチェット、バルベラ、オヴァーダ
  • 生産者: グアルコ蒸留所
  • 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
  • 容量:700ml
  • 参考価格:6,500円

  • 原産国: イタリア
  • 産地: ピエモンテ
  • 品種: コルテーゼ
  • 生産者: グアルコ蒸留所
  • 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
  • 容量:500ml
  • 参考価格:3,600円

トッレ・デッラ・ガリセンダ / オルシ・ヴィニェート・サン・ヴィート

What we do


オルシ・ヴィニェート・サン・ヴィートはボローニャの丘の上にあります。ビオディナミ栽培、自然酵母の発酵、無濾過、無清澄の自然派グラッパです。ピニョレットのヴィナッチャ(搾りかす)を使ったグラッパは、とても珍しいです。日本の市場ではほとんど見かけません。もっと仕入れて欲しいです。
醸造はグアルコ蒸留所が行っています。年間300本足らずの生産量なので、あまり手に入りませんが、とにかく美味しいので、お薦めさせてください。

  • 原産国: イタリア
  • 産地: エミーリア・ロマーニャ
  • 品種:ピニョレット
  • 生産者: オルシ・ヴィニェート・サン・ヴィート
  • 味わい:甘口☆☆☆☆★辛口
  • 容量:500ml
  • 参考価格:10,000円

まとめ

グラッパはアルコール度数の強いお酒ですが、胃液の分泌を促してくれたり、消化を助ける食後に理想的な飲み物です。本当に美味しいグラッパを飲むとリラックス効果も大きいと思います。
一度飲んだら忘れられない芳醇な香りと深みのある味わいで、美味しすぎて案外すいすい飲めてしまうので、飲み過ぎには、注意してくださいね。